河内宏オスマー記念科学教授インタビュー
オスマー記念科学教授職は、ニューヨーク・ブルックリン地区のドナルド・F・オスマー教授とミルドレッド夫人からの寛大な遺贈によって設立され、日本のトップレベルの研究者に授与されてきました。河内宏教授は、2013年4月にこの職に就任されました。
JICUF:河内先生、インタビューに応じてくださり、ありがとうございます。まずはICUとの出会いについて教えてください。
河内教授:研究生活の最初の30年間をつくば市の農業生物資源研究所(NIAS)で過ごし、2008年3月に退職しました。日本では定年が60歳ですが、特任上級研究員として、もう2年NIASに残りました。日本政府が支援するプロジェクトのリーダーとして、仕事を終える必要があったからです。
非常勤講師としてICUで学部生及び院生を教え始めたのは、2008年の9月です。ICUとの最初の出会いは、ロベルト・W・リッジ教授を通してでした。リッジ教授は、ICUの理学研究科で細胞生物学を担当しておられ、20年間共同研究をしました。
JICUF: ICUとは長いお付き合いなんですね。ご研究の専門分野について教えてください。
河内教授:専門は植物分子・生理科学及び遺伝学です。特に植物・微生物相互作用の分子機構の研究に長年従事してきました。
日本の分子生物学界において、マメ科植物ー根粒菌の共生窒素固定研究の先駆者の一人であることを誇りに思っています。ICUでは、専門と研究実績に基づき、遺伝学、植物発育、バイオテクノロジーなどを教えています。
JICUF: この研究テーマに関心を持たれたきっかけは何ですか?
河内教授:私は植物生理学者として研究生活を始めました。ダイズの共生窒素固定に関心があり、大学卒業後10年間は、ダイズの根粒菌の生理学、具体的には宿主植物細胞と共生細菌の代謝関係の研究に取り組みました。その後分子生物学に移行しました。この研究テーマは、農作業にとって極めて重要なものです。
JICUF: ICU以外の大学でも教えられたことはありますか?
河内教授:東京大学、東京農工大学、広島大学、鹿児島大学、名古屋大学、日本大学など多くの大学院で教えてきました。現在教えているのはICUだけです。
JICUF: ICUで教えられて良かったと思われる点はありますか?
河内教授: 学生の質が高く、学ぶことに熱心です。また、日本の他大学と比べて、ICUでは学生と教員の距離が近く、親密です。ほとんどのクラスは学生数が少なく、一人一人の学生をよく知ることができます。学生とこのような関係を築けるのは、ICUの魅力の一つです。
キャンパスもとても気に入っています。緑にあふれ、昔の武蔵野の風景を思い起こさせます。子供時代、10年間を過ごした街に近いことも魅力です。小・中学校時代、ICUのキャンパスで自転車に乗ったり、遊んだりするのが大好きでした。
JICUF: そうでしたか。ご趣味はありますか?
河内教授:自分で作った真空管増幅器でクラシック音楽を聞くのが好きです。社会科学や歴史に関する本を読むのも好きです。
JICUF: ユニークなご趣味ですね!卒業を控えたICUの学生にアドバイスはありますか?
河内教授: 多くの学生は、リベラルアーツの精神を汲み、多様な関心を持っています。たとえば、講義後に学生に遺伝学や植物発育についてエッセーを書かせると、私が教えたテーマの社会的側面について言及することが多いのです。これは、ICUの科学プログラムが、リベラルアーツの一環であることを反映していると思います。
学生には、幅広い知識を有するのは良いことですが、最新の自然科学についての専門的かつ深い知識を持つことも必要であると伝えたいです。日本の他の大学院に進学を目指す学生にとっては、とりわけ重要なことです。リベラルアーツの幅広い教育と、高度で専門的な自然科学の教育を調和させる努力をしなければなりません。
JICUF: インタビューに答えてくださり、ありがとうございました。