アラムナイ・ストーリーズ第4回 – 清水素子さん
今月ご紹介するのは、同窓会ワシントンDC支部代表の清水素子さんです。ワシントンの同窓生が「宝」と呼ぶ清水さんは、献身的に同窓会イベントを企画され、ICUやJICU職員とDCエリアの同窓生の架け橋となってくださっています。
清水素子さん
「素晴らしい人々との出会い、可能性を試すことを励ましてくれた宝物の4年間」
私がICUに入学したのは1984年のことです。公立大学の入試準備しかしておらず、実家から近い大学に通う予定でしたが、一校だけ東京の大学を記念受験してみることになりました。
受験の日、行きの電車の中で急遽読んだ受験問題が非常に面白く、どんな学生を求めているどんな理念の学校なのだろう、と新鮮な印象を持ったのを覚えています。またキャンパスは、初めて訪れたのに親しみやすい規模感がありました。つまり受験日にICUに一目ボレしたのでした。
運良く合格したものの、両親からの許可を得られるか心配しましたが、実はICUは母が行きたかった憧れの大学でもあり、寮に入るという条件で東京の大学に入学することに同意を得ました。そして寮生活を経験できたことが、ICUでの4年間をかけがえのないものにしてくれました。夜中まで語り合い、一緒に笑い泣いき、寮で得た友人は一生の宝となっています。
ICU では、人文学科の美学美術史を専攻し、お二人ともすでに故人ですが、田中文夫先生とDr. J. Edward Kidderに師事しました。卒業後も交流があり、キダー先生には、留学先のテネシー大学でもお世話になりました。(キダ-先生は、退職後はテネシー州の隣のノースカロライナ州に拠点を構え、ICUからの留学生をご自宅によく招いてくださっていました。)
人文学科では、ギリシャ語や哲学、宗教音楽の授業でパイプオルガンを弾いたりと、大変貴重な体験をさせていただきました。リトリートやキャンパス内の教授宅で開かれるセミナーなどでじっくり教授陣のお話を聞けたのも素晴らしい経験です。数学のパラドックスの授業など、理解できないままですが、知的好奇心を刺激する授業は今でも印象に残っています。独立して扱われている既存の学問分野(Academic Field)に、実はバリア(barrier)は殆ど無く、膨大な知の宝庫があって、バリアにとらわれることなく探求する自由があるのだとLiberal Artsの授業を通して感じました。Liberal Artsには「人を自由にする学問」という意味があるのか、と思い至ったものです。
職業には直接結びつかない課目もあったかもしれませんが、考えるスキルや、新しい試みを恐れないこと、語学、コミュニケーションの大切さなど、大学がユニークなカリキュラムを通して、人生で有用となるツールを提供しようという姿勢は十分伝わりました。大学院に進んだり、留学するICU生の数が多いのは、更に学問分野を探求したり、世界に飛び出していくことを恐れない素地を学校が少なからずとも育んでくれるのではないかと思っています。
また、他人と違うことが必ずしも奨励されない日本の中で、生き生きと個性を発揮している人がICUに学生として集まっていたように感じます。在学中に出会ったクラスメートや先輩、後輩は個性豊かで、田舎の女子高から来た私には、輝いて見えたものです。在校中は、生け花部の他、オーケストラに所属したり、ポップロックバンドを形成して(当時はカセットテープが主流)オリジナル曲のカセットテープを売ってみたり、学外では、選挙活動を手伝ってみたりと、興味のあることを試してみることができました。
日本で一旦就職したものの、米国の大学院に留学したまま、結局米国在住25年近くになります。留学中は、都市計画の修士を取得し、もともと建築史に興味があったので、建築も専攻しました。都市計画が転じて、公共政策の博士号在籍中に、NASAからの資金を得て、環境の観点から航空機騒音のシュミレーションをし、その縁から始まった仕事では、交通関係の連邦政府相手に統計やコンピューターモデルを使った分析などを提供するコンサルタントをしていました。米国の同僚にAcademic Backgroundを説明すると、美術史から都市計画、建築、交通政策と一貫性がなさそうだと、首をかしげられるのですが、私の中では、自分の興味のある分野を追ってきたので、全てはつながっていると思っています。ICU在学中に味わった、未知の分野、興味のある分野に足を踏み入れるワクワク感が、限られた条件の下ですが、進む道を選択する時のカギになっているのではないかと思います。
ワシントンDC在住も20年以上になります。世界のいろいろな国に行きましたが、必ずと言っていいほど、ICU生とお会いする機会があります。様々な土地で活躍されている卒業生、在校生にお会いすると、嬉しく、またICU生の底力を感じます。ワシントンDCの同窓会にも60名以上の同窓生がいらして、皆さんがそれぞれ活躍していいらっしゃるのは、頼もしい限りです。日本ももちろん、いろいろな土地で活躍されているICU生の皆さんに思いをはせつつ、さて、次は何をしようかなと考えているところです。
清水さん、いつもICU・JICUFのためにご尽力くださり、ありがとうございます!