シリア人学生イニシアチブ後の難民学生の支援
シリア人学生イニシアチブは、シリア内戦から逃れた学生をICUに受け入れるための奨学金プログラムで、2017年にICU、JICUF、難民支援協会(JAR)によって設立されました。ICUは、日本で海外から直接難民の学生を受け入れた最初の大学の一つです。教育パスウェイズ(教育の機会を通じて難民を第三国に受け入れるプログラム)の先駆者として、JICUFはJAR、そして後にJARの難民受け入れ事業を引き継いだパスウェイズ・ジャパンと共に、日本のみならず、アジア太平洋地域の高等教育機関に対し、より多くの難民学生に門戸を開くよう働きかけてきました。JICUFとパスウェイズ・ジャパンは、Global Task Force on Third Country Education Pathways (第三国への教育パスウェイズのためのグローバル・タスクフォース)のメンバーでもあり、教育パスウェイズを拡大するための国際的な取り組みに貢献しています。
2022年9月までに、SSIを通して7名のシリア人学生が採用されました。2018年にICUに入学した2名は今年6月に卒業し、7人目の学生は今月ICUに入学しました。JICUFは、この秋をもってSSIを通じた新規採用を終了し、来年以後、二つの方法で難民学生の支援を継続することを決定しました。
第一に、JICUFはパスウェイズ・ジャパンが運営する「日本語学校パスウェイズ」プログラムに資金を提供します。このプログラムはSSIの一年前に設立され、2017年より、トルコに住むシリア人学生が日本国内の日本語学校で2年間日本語を学ぶための奨学金を提供してきました。このプログラムを修了した学生の多くが、日本で大学に進学しています。2021年に主な資金提供者が支援を打ち切ったことを受け、JICUFが代わりに年間5万ドルを提供し、プログラムの継続を支援することを決定しました。JICUFの支援金は、学生の日本への渡航費、オリエンテーション、渡航後半年間の生活費などに当てられます。パスウェイズ・ジャパンは今年、このプログラムを通して10名から12名のシリア及びアフガニスタン出身の学生を受け入れる予定です。これらの学生は、2023年春より日本語学校で学習を開始します。
第二に、JICUFはICUと共に、SSI後も難民・避難民の学生を支援するための奨学金を設立することを目指します。詳細は未定ですが、国籍にかかわらず、「日本語学校パスウェイズ」プログラムを修了した学生を支援する予定です。
JICUFは、SSIから得た教訓を踏まえて、このような決定に至りました。教訓の一つは、日本の大学の入学要件が厳しく、最も脆弱な立場に置かれた難民・避難民の学生が応募できないことでした。TOFELやIELTSなどの英語能力測定試験で高得点を得たり、高校で優秀な成績を収めることは、戦争などによって教育を中断され、他国への移動を余儀なくされ、新たな環境や言語で教育を再開せざるを得なかった多くの学生にとって、非常に困難なことです。そのため、SSIの応募資格を満たせる学生は極めて限られていました。
もう一つの教訓は、難民・避難民学生だけでなく、多くの留学生にとって、日本語の習得は多大な努力を要するということでした。ICUの優れた日本語教育プログラム(JLP)を受講した学生でさえ、日本で就職するのに必要なレベルの日本語能力を身につけることは容易ではありません。
これらの理由から、JICUFは、「日本語学校パスウェイズ」を難民・避難民学生が日本で高等教育を受けるためのブリッジプログラム(大学教育の準備プログラム)として位置付け、支援することを決定したのです。高等教育機関に入学する前に、徹底した日本語教育を受け、日本での生活に順応する機会を設けることが、学生の長期的な成功に繋がると考えています。
JICUFは、今後より良い形で難民・避難民学生を支援することを目指します。皆様には引き続きご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。