同窓生宮﨑貴子さんに伺う緒方貞子先生の思い出
宮﨑貴子さんはICUで教育学科・心理学を専攻し、1980年に卒業した同窓生です。卒業後、25年間ソニーやTDKなどの企業に勤めた後、2006年からはフリーランスの通訳者・コンサルタントを務めています。宮崎さんは長年アメリカ在住で、1990年代にはICU AAA(Alumni Association in the Americas)の会長を務めました。
最近、JICUFスタッフが宮崎さんとお話しする機会に恵まれ、元国連難民高等弁務官で、1960年代から70年代にかけてICUで教鞭を執った緒方貞子さんとの思い出について伺いました。以下は宮崎さんからのご寄稿です。
ICU北米同窓会活動を通じて=緒方貞子(元国連難民高等弁務官)さんから学んだ事 =
今年はICU大学創立から75年。日本が戦後焼け野原だった頃、北米の教会、教育機関、日本の財界が中心となりICU設立の為の募金活動が行われた。アメリカの大学のキャンパスでは1ドル募金が行われ、短期間でその資金が集められたと聞く。
私は1992年から1999年までICU北米同窓会執行部に関わり、最後は会長としてICU 50周年のお祝いを開催する事が出来た。そこには 戦後ICU創立の為に献身的に募金活動を行ったJICUFオリジナルメンバーのにこやかな顔があった。
当時の北米同窓会として行った様々な活動の中で、私は国連難民高等弁務官として活躍した緒方貞子さんと関わる貴重な機会があったので、ここにそれを共有しておきたい。
まず最初は1994年11月に行った「緒方貞子講演会」。最初はICUの同窓会として打診した所、緒方さんから他校との合同であればやりますという答えが返ってきた。上智大同窓会にも声をかけ、当日は講演会場に入り切れない程の卒業生が駆けつけた。
次は1999年5月、クリス和田さん(元ソニー上級副社長、日本人初のロビーイスト)が発起者となった「コソボ難民基金」の募集活動。クリス和田さんは私のICU、職場を共にする大先輩である。「貴子、コソボだ~!」というクリスの一言で、NY在住の大学4校(ICU、上智、聖心、青山)の同窓会が団結し、僅か2週間足らずで166名から1万ドル以上の寄付金を集め、ジュネーブから国連に到着したばかりの緒方さんに手渡しする事が出来た。(Yomiuri America 5/7/1999記事)在米日本人の同窓会4校が結束し、小さいながらも民間草の根活動として緒方さんを直接後押しする事が出来た。
最後は残念な思い出になる。コソボ募金で緒方さんにお会いして2カ月が過ぎた時、緒方さんから1通のE-mailが私の所に届く。クリス和田さんが、突如心臓発作でお亡くなりになりそのお悔みだった。緒方さんはコソボ募金活動で面会したクリスとの思い出、日米ビジネス界の橋渡し役であったクリスの功績を讃えていた。私はお返事として、面会した日クリスがどれだけハッピーだったか、募金活動の成功を祝って彼が皆に振舞ってくれたシャンペンがどれだけ美味しかったかをお伝えした。
こうした緒方さんとの関わりの中で学んだ事がある。
まず募金活動は大勢の仲間と一緒にやる事。
そしてリーダーの情熱、啓蒙、勢いが人を動かすという事。
JICUFがシリア難民に対する奨学金制度を作った時、少額ながら私は直ぐに小切手を送った。個人の善意は大海に一滴であるが、でも点を面にする努力の継続が大切なのだろう。2022年にはJICUFの働きかけをきっかけにICUがいち早くウクライナ難民の学生を受け入れると発表した。すると他の大学も次々にそれに追随した。それをTVのニュースを見た時、私はとても誇らしかった。
今やJICUFがUNHCRの年次会合に出席しているとも聞く。これからもICUが先駆者となり、次の世代を育てる日本の大学が一校でも多く門戸を開き、その手を世界に差し伸べる事を願っている。
宮﨑貴子(ID1980 前IUC-AAA会長)