2017-18年度JICUF Study Abroad奨学金受賞者の紹介
JICUFは、2017年から2018年にかけて米国内のICUの協定校に留学した成績優秀な5名の学部生にStudy Abroad奨学金を授与しました。
Study Abroad奨学金は、北米の同窓会支部を中心とする同窓生その他のご支援者からの寛大なご寄付により、2012年に設立されました。2017年度までは成績優秀者5名に各2千ドルが授与されましたが、2018年度からは、優秀でありながら、経済的な事情により海外留学が困難な1名の学生に1万ドルを支給することになりました。また、奨学金の対象は、米国内に限らず、世界中のICUの協定校に留学する学部生に拡大されました。
2017年度の本奨学金受賞者と留学先は以下の通りです。
- 花岡圭太さん(ポモナカレッジ)
- 眞神花帆さん(オハイオ州立大学)
- サンローラ 茉莉亜さん(ペンシルバニア大学)
- 砂村真由さん(カリフォルニア大学バークリー校)
- 武田有加さん(カリフォルニア大学サンタクルーズ校)
2018年度の奨学生、岸珠恵さんはこの秋ラトガース大学に留学します。岸さんの紹介記事はこちら。
なお、2019年度のStudy Abroad奨学金の応募受付期間は9月1日から10月31日です。詳細はこちらでご覧ください。
留学を終えて帰国した2017年度奨学生5名のうち、3名の奨学生の感想をご紹介します。
サンローラ 茉莉亜さん
留学を終え、一番心に残っていることはそこで出会った人たちだと思います。年も専門も関係なく、寮のみんなでカードゲームや格闘技をして遊んだり、長々と語り合った日々が私をもっと大きな人間にさせてくれたと思います。勉強は難しく特に前半の方は精神的にも苦戦しました。しかし、全力で取り組むことで満足できる結果を出せたので、それは自分自身に対しての自信へと繋がりました。この素晴らしい機会を与えてくださった皆さん、援助をしてくださったJICUFの皆さんには感謝しきれません。本当にありがとうございました。
武田有加さん
私はカリフォルニア大学サンタ・クルーズ校に留学しました。授業では、アメリカで今もなお続く人種差別や格差社会とそれらに関する政策や社会活動について学びました。よく百聞は一見にしかずと言いますが、日本で文献を通して学ぶのではなく、実際にその問題を抱える現地で学んだことに非常に意義があったと感じます。移民の学生達と寮で就職について語り合ったり、経済格差が顕著に表れているサンフランシスコの街を歩いたりしたことは、私の視野を一気に広げてくれました。また、アメリカの学生と日本の学生の違いを体感したこともありました。社会運動論の授業で、複数の受講生が授業開始後に突然手をあげ、「ちょうど今から私たちの仲間が、院生を対象とした税負担増に反対するデモ行進を学内で行うの。私たちはこれから授業を抜けてそのデモ行進に参加するわ。応援してくれる人がいたら一緒に来てちょうだい!」と言うと、授業中であるにもかかわらず半数以上の学生が賛同してデモに向かいました。これまで社会の出来事に何か意見を持ったとしても、行動に移して表明したことがなかった私は、アメリカの学生の主体性や積極的に強い衝撃を受けました。留学は、自分自身の考え方や価値観を見直す良い機会であったと思います。留学を通して見たこと、聴いたこと、感じたことを、残りのICUでの生活やその後の人生において何らかの形で生かしていきたいと思います。今回の留学を支援してくださった日本国際基督教大学財団の皆様に心より感謝申し上げます。
眞神花帆さん
「航空心理学を勉強したい。日本では勉強できないこの学問の専門家にどうしてもなりたい。」このような思いで私は留学先としてオハイオ州立大学を選びました。大学自体がパイロット養成を行っておりかつ私の興味分野であるヒューマンファクター、人間工学などの中心地でもあるこの大学は、私にとっては夢のような留学先でした。日本では得られない航空学や航空心理学に関わる知識や経験を最大限に得て帰国することを胸に誓い、私はアメリカへ旅立ちました。結論から述べると、この目標は大いに達成することができたと言えるでしょう。航空心理学に関係のある心理系の授業と航空学の授業を同程度の割合で受講し、授業外でも飛行機や心理学に関連したクラブ活動に従事したり、教授や航空業界の方々とお話をさせていただくなど、むしろ想像以上に豊かな経験をさせていただきました。ですが、この知識や経験が私にもたらした影響は私の予測とは全く逆のベクトルを向いていました。つまり、これらの豊かな経験全てが、自分と航空学との不適合性を指し示したのです。一番揺るぎないものとして信じていた根幹部分が崩れ去ってしまい、そしてそれを失うのが怖いあまりに自分に嘘をついたまま航空学の勉強を続けようと悪あがきをした時期もありました。ですが、「もう少し気楽に生きても全く問題ないんだよ。自分の人生なんだからもっと自分の今ある感情を大切にしたほうが良い」、そんな単純な、けれど今まで誰もかけてくれなかった言葉をとある教授からいただいたことにより、自分の心に踏ん切りがつきました。そして何より自分の人生の主軸が、立派な目標作成とその達成のみであるということに気づかされたのです。もちろん先のことを見越して人生の計画を立てることはとても大切です。ですが私はこれに固執しすぎるあまり、今を生きる自分を押し殺し、半ば機械的に「やらなければならないこと」をこなしていました。この自分に対する気づきこそが留学の中で得た一番のものと言っても過言ではないかもしれません。また、棄却しうる仮説という、科学者に一番大切な概念を,身を以て体験することができたのも良い経験でした。仮説(航空心理学)は心の底から信じるからこそ研究へのモチベーションが高まりより質の良いリサーチができる。深くリサーチをすることで初めて仮説に対抗する、もしくは棄却するような事実が見つかる。そして今までかけてきたコストを気にして自分の説を守ろうとするのではなく、潔く欠損を認める勇気が何よりも大切である。思い返せば私の留学はまさにこのプロセスを一通り終えたと言えます。そしてここではあまり熱くは語れませんでしたが新たな仮説=認知神経科学という情熱を注げるテーマを手に帰国致しました。日本での卒業までの一年、もしかしたらその後の数年間はこの仮説に対する新たな検証期間となるでしょう。近い将来,この仮説を棄却しうる証拠をまたしても手にしてしまうかもしれません。ですがサイクルの中で最も辛い、「棄却する」ということをやってのけた私にはもう怖いものはありません。ここでは触れられなかった様々な出会いや経験も含め、今回の留学は「眞神花帆」という存在に、あらゆる面から自信を与えるものとなりました。最後になりましたが、このような素晴らしい留学のサポートをしてくださったJICUFに、心から感謝申し上げます。