2019年度JICUF Study Abroad奨学金受賞者:池田百音さん
12月上旬、2019年度のJICUF Study Abroad奨学金受賞者が発表されました。ICU教養学部2年生の池田百音(もね)さんです。
Study Abroad奨学金は、より多くのICU生に海外で学んで欲しいと願う北米の同窓生及びご支援者からの寛大なご寄付によって、2012年に設立されました。JICUFは毎年、交換・海外留学プログラムへの参加を希望する1名の学生に1万ドルを支給しています。
来年秋からカリフォルニア大学に留学する池田さんをメールでインタビューしました。
JICUF:簡単な自己紹介をお願いします。
池田:国際基督教大学2年の池田百音です。東京生まれの東京育ち。中学と高校の6年間、調布市仙川にある桐朋女子中・高等学校に通い、ソフトボールに打ち込みました。ICUでは生物学を専攻し、特に細胞や遺伝子など生体を構成するミクロな世界に興味を持っています。趣味はピアノを弾くこと、行ったことのない場所へ行き、その町の雰囲気を楽しみながら散歩することです。最近では、知識の浅はかさを痛感し、意識的に読書(乱読)の時間を増やすようにしています。
JICUF:交換留学に申し込まれた理由は?
池田:主に3つあります。まずは、免疫学と腫瘍学を学びたい、という思いからです。私は中学生の頃から、人の生態に興味を持っていました。さらに、病気発症のメカニズムを研究し、人の命を救いたいという夢を漠然と抱いていました。ICUに入学後、遺伝学や細胞生物学など生物学の様々な科目を履修し学びを深めたことがきっかけとなり、人体の免疫機構や癌について学びたいという思いが強くなりました。そして、免疫学や腫瘍学を学ぶためのオプションを探し求めてICUの先生方に相談したり、海外での研究実績を調べたりする過程の中で、アメリカで免疫学の研究が盛んに行われている事を知り、交換留学でアメリカに行こうと考えました。
2つ目は、自分への挑戦を課すためです。私は1年生の夏にSEAプログラムという短期留学に参加し、アメリカのSaint Michael’s Collegeに滞在しました。それまで一度も海外経験がなかった私にとって、SEAプログラムは6週間という短い期間でありながら、その後の私の生き方を変えるほどの大きな気付きを与えてくれました。それは、いかに自分が未熟であり、自立した人間になる必要があるか、という事です。留学先では、日々の勉学だけではなく、部屋の掃除や洗濯など身の回りの環境全てを自分でマネジメントしなければならないため、生活は簡単ではありませんでした。この経験によって、留学は決して楽な道ではないけれども、私は必ず人生の糧に変えることができるという確信を持ち、交換留学に応募することを決意しました。
3つ目は、異なる文化背景を持つ人々と直にコミュニケートする機会を得たいからです。昨夏、国際ボランティアに参加し、2週間、約20人の外国人とシェアハウスに滞在しました。出身地や文化・宗教背景が様々な人々と会話し意見交換する時間は非常に有意義なものでした。なぜなら、異文化に対して、知らず知らずのうちに多くの固定観念を抱いていたことに気付かされ、直接のコミュニケーションをすることの大切さを実感したからです。留学先のカリフォルニア大学は、広い地域から交換留学生を受け入れている大学であるため、異文化と交流する機会が十分にあることを期待しています。
JICUF:1年間の留学生活に期待することは?もっとも楽しみにしていることは何ですか?
池田:期待することは、(2)の留学理由に述べた3つの目的を果たせることです。加えて、海外での研究がどのようなものであるのかを実際に経験したり、ラボの授業を通して、英語での実験論文の書き方も学びたいと思っています。また、世界中から集う留学生や現地生との日々の他愛のない会話や授業でのディスカッションを通して、彼らの意見や思想が私の視野を広げ、多角的に物事を捉えるための練習の場が多く設けられていることを期待しています。特に、留学によって自分がどう変化し成長するのかを一番楽しみにしています。正直なところ、長期の海外生活は未知であり不安もたくさんあります。しかし、留学から帰ってきた時に「あのとき留学を決意したことは間違いではなかった」と胸を張って言えるような留学生活にしたいと考えています。
JICUF:将来の夢は?
池田:病気の治療研究に携わり人の命を救いたい、という中高生の頃からの夢に加えて、ICUでの文理を問わない広い学びを通して、生命倫理にも強い関心を持つようになりました。私は、進歩する医療技術に法整備が追いつかず、技術だけが独り歩きしている現代に危機感を覚えています。求められているのは、技術に取り残されている人々と、その技術を繋ぐ役割なのではないか、そしてこれは、技術の長所とその危険性の両方を知った者にしかできないのではないか。そのようなことを、まだぼんやりとですが考えるようになりました。癌研究も取り組んでみたいが、医療技術とそれを用いる人々との関係性に着目した仕事や活動にも関わってみたい。まだ決断できてはいませんが、ICUや留学先での学びを通して、将来のこともじっくり考えていきたいと思っています。
JICUF:池田さん、ありがとうございました。実り多い1年になりますように!