2018年春期JICUF助成金受賞者の紹介
2018年春、JICUF助成金委員会はICUの教員・学生が提出したプロジェクト案を審査し、9つのプロジェクト(内訳は教員3、学生6)を選考しました。受賞者の皆様、おめでとうございます。
以下に、本年度採択されたプロジェクトの要約を掲載します。
マルグリット・デュラス – 理性批判
申請者:オリビエ・アムール=マヤール准教授
助成額:¥750,000
実施日:2018年11月23-24日
この会議では、フランスの小説家・思想家であるマルグリット・デュラスの作品に焦点を当て、『デュラスと現代思想』、『デュラスと第二次世界大戦後の政治』などのトピックについて議論します。参加者は、デュラス作品の哲学を包括的に分析し、対話を通してデュラスの思想、哲学、信仰、政治観につき新たな視点を得ることを目指します。また、デュラスの思想におけるフェミニズムとジェンダー問題の重要性にも注目します。JICUFの助成金は、ゲストスピーカーの宿泊費、謝礼、食費、国内交通費の他、学部生アシスタントへの謝礼、質疑応答時の逐次通訳などに当てられます。
MOOCsの学習者支援におけるPAHアプローチの統合: フィリピンとオーストラリアでの実地研究
申請者:ジェニー・ファハリド(博士後期課程の大学院生)
助成額:¥320,000
実施時期:2018年8月(フィリピン)、秋(オーストラリア)
”Pedagogical, andraogical, heutagogical” (PAH)のアプローチがMOOCs(Massive Open Online Courses、ムークス)の学習者支援の向上につながるかを検証するファハリドさんの実地研究を支援します。この調査の目的は、MOOCs提供者と積極的に協力し、PAHに関わる学習方法やアプローチを企画・発展・統合することと、これらのアプローチがMOOCsの学習者支援にとって効果的か否かを検証することです。異なる文化的背景を持つグループの比較を行うために、2カ国のMOOCs提供者との共同研究を調査します。JICUFの資金は、航空券代、国内交通費、研究資料、宿泊費、協力者へのお土産代に当てられます。
「持続可能な社会のためのエネルギー効率と大学の役割」ワークショップ(SUDee2018)
申請者:エクハルト・ヒッツェル上級准教授
助成額:¥832,000
実施時期:2018年秋
この1日ワークショップでは、エネルギー効率と大学の役割について議論します。ICU及び他の日本の大学の教員の他、国の内外からのゲストスピーカーが参加し、持続可能な「ゼロ・カーボン」の大学を実現するために、大学の教職員、学生、一般市民が協力する方法を提示します。世界の先駆的な公的・私的機関や持続可能な建物の事例を紹介し、千人から1万人規模の教育機関で、いかにエネルギー消費を合理化しつつ、室内環境の快適さを大幅に増進するかを議論します。エネルギー効率を高めるには、教育機関の設計、デザイン、技術、インフラ、教育、投資、経営と会計における具体的な対策が必要です。
チームあすなろとICU生による東北ボランティア活動
申請者:加藤恵津子教授
助成額:¥279,610
実施時期:通年
このプロジェクトは、ICU生が須賀信平さん率いるボランティア団体、「チームあすなろ」と共に東北を訪れ、2011年の東日本大震災の被害を受けた地域で奉仕活動に従事する機会を提供します。過去数年間にわたり、チームあすなろが月一回被災地を訪れる際、ICU生が参加してきました。2018年度からは、宮城県石巻市の高校生や最近の高校卒業生たちと交流・協働することになりました。
異文化交流ナイト (国際交流サークル ICU Hub主催)
申請者:丸一綾音(学部生)
助成額:¥30,000
実施時期:2018年秋
今年秋に開催予定の「異文化交流ナイト」は、3月末に ICU hubが企画した「ジャパン・ツアー」に参加した5名の学生が主催します。イベントの目的は、様々な国籍のICU生が集い、新しい人と出会い、お互いの文化を理解する機会を提供することです。イベントは、1) 和食や他国の料理のワークショップ、2) ビュッフェ形式のポットラック・ディナー、3) 「ジャパン・ツアー2018」参加者による報告会の3部構成です。参加は無料で、全てのICU生を歓迎します。
カナダにおける外国語/継承語としての日本語の教授法: 民族誌学的考察とインタビュー
申請者:西郷未希子 (学部生)
助成額:¥188,000
実施時期:2018年7-9月
この研究プロジェクトは、カナダの日本語学校で民族誌学的観点から授業を観察し、学生にインタビューを行うことによって、カナダにおける日本語教育の現状を調査するものです。目的は、1) 外国で日本語を教えることと、2) 継承語として日本語を教えることの問題点を明らかにすることです。授業の観察は、バンクーバー市内の2つの日本語学校で補助教員として働きながら行われます。西郷さんは2018年7月から9月まで学校で授業と文化活動をサポートします。この期間に、両校の学生・教員双方にインビューを行い、カナダで日本語を学ぶ/教える際に直面する問題について話し合います。さらに、日本語を学ぶ成人学生の意見を聞くために、バンクーバーのサイモン・フレーザー大学の日本ネットワーク協会も訪問します。
授業の観察とインタビューを通して、西郷さんは日本語学習者・教員が直面する問題を分析し、カナダにおける日本語教育の改善点を提案します。調査結果は、日本語教授法の改善に役立ててもらうため、ICUで語学教育を専攻する学生の他、ICU Hubのメンバーにも共有されます。JICUFの助成金は、成田からバンクーバーへの往復航空券代に当てられます。
ハーバード大学博士課程学生とのハッカソン(hackathon)
申請者:佐藤かほり特任講師
助成額:¥300,000
実施日:2018年5月28日-6月1日
5月末に開催されたこのワークショップの目的は、定量的解析と海外でのキャリア形成の双方に興味を持つICU生に刺激を与えることでした。ハーバード大学及びスタンフォード大学の博士課程で生物情報学を学ぶ院生を招き、アメリカでの大学院生活を紹介すると共に、アメリカの大学院への応募手続きについての説明会を開催しました。さらに、科学的・社会的問題の分析に不可欠な統計・プログラミングの基礎技術を教えるワークショップも開催しました。ワークショップ終了後、ゲストの院生はプログラミング言語R・パイソンを使ったハッカソンを開催しました。ハッカソンの終わりに、参加者が分析結果を発表する会合がありました。このプロジェクトは全て英語で行われ、JICUFの助成金はハーバード大学の学生1人の航空券、ハッカソンの1位・2位の学生への賞品、助手2名への謝礼、備品、軽食の費用に当てられました。
ラテン・フェスティバル(Spanish Speaking Society主催)
申請者:竹村 萌美 (学部生)
助成額:¥94,000
実施日:2018年5月28-30日
Spanish Speaking Societyが開催したラテン・フェスティバルは、ICUの学生や教員がラテン・アメリカ文化に触れる機会を提供しました。イベントの目的は、参加者にラテン・アメリカ文化に興味を持ってもらい、共に楽しみ、普及することでした。
フェスティバルは3部構成で、ダンスのワークショップ、料理のワークショップ、そしてラテン文化に関するレクチャーが開催されました。ダンスはラテン文化とは切っても切り離せないもので、参加者はインストラクターの指導の下、伝統的なダンスを学びました。 JICUFの助成金は、 ゲストスピーカーの交通費、宣伝費、材料費などに当てられました。イベントはすべてのICU生に開かれたものでした。
ICU × 台湾 × ニューヨーク ダンス・プロジェクト:「五分鐘(ウー・フンツォン)」(モダンダンス部主催)
申請者:山縣 愛(学部生)
助成額:¥474,500
実施日:2018年9月14-23日
モダンダンス部(MDS)主催のこのプログラムは、Seed Dance Company (SDC)のプロ・ダンサーとICU生が共同でダンス作品を作り上げるプロジェクトです。参加するプロのダンサーは、台湾を拠点に活躍するSDCディレクターの黄文人さん他ダンサー3名、そしてニューヨークで活躍する振付師の篠原憲作さんです。 台湾工科大学でダンスを教えている黄さんと3名のSDCのダンサーは、アメリカのモダンダンスと中国の伝統舞踊に造詣が深く、元MDSメンバーで2008年にICUを卒業した篠原さんは、2009年からニューヨークで活動しているエクスペリメンタルなダンス・アーティストで、独自のダンスの動きを生み出す努力を続けています。
このプロジェクトは、異文化間コミュニケーションに焦点を当てることで、大学の教育環境をより豊かにします。SDCと篠原さんは、MDSメンバーを中心とするICU生のグループと、「五分鐘」(中国語で「5分間」の意)と題した30分間の作品を作ります。作品の完成後、ICUのディッフェンドルファー記念館で、MDSのメンバーが公演を行います。MDSは最近、異なる国や文化で人々が日常的におこなう動作を研究しており、これらと単純な動きを分解して作った新たなダンス・スタイルを組み合わせて新作品を作ります。国際的なコラボレーションを望んでいたMDSにとって、このプロジェクトはうってつけのチャンスです。JICUFの助成金は、招聘ダンサーの往復航空券、国内交通費、宿泊費、食費に当てられます。