JICUF助成金受賞者スポットライト:佐藤かほり先生がICUで「ハーバードPhD学生と学ぶ定量的解析ハッカソン」プロジェクトを実施
この春、保健体育科の佐藤かほり特任講師が「ハーバードPhD学生と学ぶ定量的解析ハッカソン(hackathon)」を開催するために30万円の助成金をJICUFより受賞しました。5月28日から6月1日に開催されたこのワークショップの目的は、定量的解析と海外でのキャリア形成の双方に関心を持つICU生に刺激を与えることでした。ハーバード大学及びスタンフォード大学の博士課程で生物情報学を学ぶ大学院生を招き、アメリカでの大学院生活を紹介すると共に、アメリカの大学院への応募手続きについての説明会を開催しました。佐藤先生にお話を伺いました。
JICUF:このプロジェクトを企画された背景について教えてください。参加した学生にとって、どのようなメリットがあったとお考えですか?
佐藤かほり先生(以下KS):まず、ICUの学生と海外の大学院生を繋げたいと考えました。最新のテクノロジーに精通しているハーバード大学の博士課程の学生と交流できるのは、素晴らしい体験です。彼らから研究生活のメリット・デメリットや、海外の大学院の入試制度について学ぶこともできます。多くの日本の学生は、海外の学生と交流する機会が極端に少ないという問題を抱えています。
また、今日の社会では、プレゼンテーションスキルが必要だと考えています。ICU生は他大学の学生に比べて数学に苦手意識があることが問題であり、この事態を少しでも改善したいと思いました。学生には、自分たちの長所と短所を認識して、可能性を広げてほしいと思います。
JICUF:プログラム中行われたイベントについて教えてください。
SK:最初のイベントは、招聘した大学院生による「博士課程で海外留学する」と題したレクチャーとパネル・ディスカッションでした。大学院生は、博士課程で海外留学するメリットに触れた上で、日米の研究環境の違いにも言及しました。さらに、海外の大学院に進学するために必要なTOEFL、GRE、推薦状の準備方法、奨学金獲得の方法を説明しました。最後に質疑応答が行われました。
この後、大学院生はデータアナリストに人気のプログラミング言語、R・パイソンを使って、プログラミングと基礎統計学に関するワークショップを開催し、ICU生はこれらを使って基礎的なプログラミングを行うことができました。プレゼンターは、R・パイソンを使った基礎計算、平均・分散・標準偏差・積率、相関・因果などのトピックを取り上げました。
専門用語を紹介した後、大学院生はケーススタディや実際のデータ応用を通して、より複雑なセオリーを説明しました。例えばサイコロ投げを使ってベイズの定理を説明し、この定理が事前の知識にどう影響するかを解説しました。他に、くじ引き、モンティ・ホール問題、ゲノムデータなどの事例も紹介しました。
ワークショップの終わりに、関心のあるテーマを元にICUの学生が3、4人のグループに分かれました。テーマには、食事と疾病リスクの関係性、生理学的データとスポーツの業績の関係性、ツイッターのデータ分析による政治的決定の予測モデルなどがありましたが、独自のテーマを選ぶことも奨励されました。
グループに分かれてからハッカソンが始まり、ワークショップで学んだ知識を応用することになりました。2日間のセッションを使って、大学院生がそれぞれのテーマに合わせて定量的分析ツールを適用する方法を指導しました。
プログラム最終日にはコンペティションを開催し、各グループが質疑応答を含め10分から15分かけて調査結果を発表しました。学生が独自で考えたテーマには、スパムメールの削除、遺伝的データによる身長の推定、ソーシャルメディア上の言葉の分類などがありました。コンペティションの終わりには、審査員の佐藤かほり先生と大学院生が最優秀プレゼンテーションを表彰しました。閉会後、パーティーが開催され、参加者は交流を続けました。
JICUF:盛りだくさんの数日間だったようですね!学生がこのような難度の高い活動に参加することについて、アドバイスはありますか?
SK:最初から苦手だから参加しないと決めつけず、学生自身の可能性を広げるためにも参加してみるのも良いと思います。このような活動は有意義だと思うので、学生が似たような活動にも参加してくれたら嬉しく思います。また、各自の強みを認識し、やりたいことに活かして欲しいと思います。グローバル化された社会に貢献するとともに、積極的に考え、独自の思考を持つ人になってくれたらと願っています。
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JICUFは、2016年以来3千万円以上の助成金を提供し、ICUの教員・学生の皆様が企画・実施したプロジェクトを支援してきました。皆様からの寛大なご支援を賜り実現した助成金プログラムの詳細は、こちらでご覧ください。ご質問・ご意見はプログラム・マネージャーのフェルナンド・ロハスまで。