ICU生が2019年国際人道法世界大会にてベストスピーカー賞を受賞
先月、フランス・オベルネで開催されたジャン・ピクテ国際人道法世界大会に3名のICU生が出場し、ICU大学院生カリカ・カスティンさんが英語部門のベスト・スピーカー賞を受賞しました。3名を指導した松田浩道助教(法学)が受賞したJICUF助成金は、出場にかかった経費の一部に当てられました。以下はカスティンさんによる大会の報告です。
3月30日から4月6日にかけて、ICUの学生チーム(大学院生カリカ・カスティン、教養学部4年鳴島歳紀、同3年藤岡誠が第32回ジャン・ピクテ国際人道法大会に出場しました。ロータリー平和フェローのカリカ・カスティンが英語部門でベストスピーカーに贈られるジルベール・アポリ賞を受賞しました。150人の大会参加者のうち、同賞を受賞するのは英語・仏語各部門1名ずつです。受賞者は、弁論の明快さだけでなく、チームワーク、文化的感受性、他者への敬意、人の話を聞く能力などを基準に選ばれます。カスティン、鳴島、藤岡のチームは、昨年の赤十字国際委員会の国際人道法模擬裁判日本大会でも準決勝ラウンドに出場しています。
フランス、オベルネで開催された一週間にわたる大会の初日は、ジャン・ピクテの17回目の命日にあたりました。ピクテは法学者で国際人道法の推進者で、どんな戦争にも制限があるべきとの考えに基づくジュネーブ4条約採択の立役者の一人でした。これらの条約は、戦時の医療関係者や一般市民などを「被保護者」と捉える基盤となりました。ピクテの功績を記念するこの大会は、1989年以来、「法を実践する」目的で毎年開催されてきました。学生チームは、政府の法律顧問、国連代表、国際赤十字委員会代表、NGOリーダー、軍または反政府軍代表など、様々な立場のロールプレーをすることが求められます。
ICUがピクテ国際人道法大会に参加したのは今回が初めてで、日本の大学としては二校目でした。大会参加は、JICUFからの資金援助で実現しました。チームメンバーはICUの松田浩道助教(法学)、赤十字国際委員会駐日事務所及び同事務所プログラムオフィサーの冨田麻美子氏、そしてICUのロータリー平和フェローで大学院生のディルトン・リベイロ氏の丁寧な指導を受け、準備を進めました。他に、ピクテ大会事務局長のクリストフ・ラノール氏、元大会出場者で指導者のギュメット・ブラン氏の支援も受けました。
ICUチームからのコメント:
ICUでは、すべての新入生が世界人権宣言の原則に立って大学生活を送る誓約書に署名します。ジャン・ピクテ国際人道法大会に出場したことによって、この学生宣誓の意味を深く理解することができました。この大会では、紛争の様々な当事者の立場でロールプレーを行いました。林の中を歩きながらNGO職員の役を演じたり、会議室で弁護士の立場から発言したりして、架空の紛争につき、人道法に基づき人権を擁護すべく、素早く機転を利かせなければなりませんでした。ICUのような恵まれた環境にいると、武力紛争は遠い世界の出来事のように思えますが、ピクテ大会に参加し、判例が未来の社会を形作ることから、世界市民として区別や比例性の原則を擁護し、不要な苦痛を防ぐことがいかに重要かを実感しました。
平和の理念の下に創設された大学の一員であることは、私たちのパフォーマンスに確実に影響したと思います。英語部門に出場した数少ない法学専攻でない学生としてジルベール・アポリ賞を受賞できたのは、ICUチームがしっかりしたリベラルアーツの土台の上に協力し合い、強豪校に勝る弁論を行ったことを意味します。他者への共感、思いやり、そして3人それぞれの専攻に基づく知識(平和研究、哲学、公共政策)を活かし、リベラルアーツの学生として、法学の知識とは異なる視点から国際人道法を見ることができました。私たちの成功は、ICUのリベラルアーツ教育と平和を尊ぶアプローチが、批判的思考と変革の原動力をもたらすことを証明しました。
松田浩道助教のコメント:
ジャン・ピクテ国際人道法大会は世界で最もよく知られたハイレベルな国際大会です。ICUからは大学院科目「法と平和」の受講生が中心となって参加しました。学生は、紛争事例を想定して行われるロールプレイを通じて国際人道法の理論と実際を体得することができます。世界各国から優秀なロースクール生が集まったなかで、ICUの「リベラルアーツのなかの法学教育」が専門性と学際的な深い教養、文化的感受性、他者への敬意等の総合力において世界トップレベルであることを示すことができました。JICUFの支援に心より感謝いたします。今後も国際的プログラムへの積極的な参加をICU生に勧めていきたいと思います。