2021年度米国人学生イニシアチブ (USSI) 奨学生、ICUに入学
今年で4年目となるJICUF米国人学生イニシアチブ (USSI) 奨学金の受賞者は、式町・スティックニー みら ロータスさんと山口 ジュリアさんのお二人です。ICUで学位取得を目指す留学生を増やすために設立されたUSSIは、アメリカの高校を卒業した成績優秀な米国人新入生に対して4年間の学費を全額支給します。
パンデミック下でも前向きに将来を見据え、最初の学期をスタートしたお二人にこれまでのICUの体験について伺うことができました。
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式町・スティックニー みら ロータスさん
日本人を母に、アメリカ人を父に持つ式町・スティックニー みら ロータスさんは、カリフォルニア州アーバインで生まれ、テキサス州オースティンで育ちました。中学校まで週末に日本語補習授業校に通い、高校では日本文化クラブを立ち上げたり、グレーター・オースティン日米協会に入会したりするなど、積極的にバイリンガルであることに努め、母校の日本語補習授業校では学生ボランティアとして関わりました。趣味はダンス、歌、ミュージカル、人と交流すること、そしてイベント企画です。
JICUF: USSIに応募した動機・きっかけは。
小さいころから日本の学校に行くことが夢でした。私には日本人とアメリカ人の両方の血が流れていますが、ずっとアメリカに住んでいましたから、「もう一つの祖国」で教育を受けるのはどんな感じだろうと常に興味を抱いていました。高校2学年時あたりにJICUFからUSSIについてのハガキを受け取って説明会に参加し、日本では稀なメリット型奨学金が受給できることを初めて知りました。JICUFプログラムマネージャーのフェルナンド・ロハスさんにメールで奨学金について問い合わせ、私が応募できる時期まで情報を引き続き受け取りたいと伝えました。やがて大学出願時期となり、ICUとUSSIに応募したんです。
JICUF: これまでの日本そしてICUでの生活の感想は。
驚いたことに、ジュリアさんと私は同じ寮で、授業も一緒に取っているんですよ!(JICUF註:ジュリアさんは現在米国からオンラインで授業を受講中ですが、みらさんと同じ寮に入ることになっています。)すでに日本にいる私から言えることは、皆それぞれ一定の期待や予想を抱いて日本に来るわけです。ICUはグローバルだという評判はその通りでした。でも、日本文化に囲まれて育った私でも、こちらに落ち着くにあたって全てが期待通りにスムーズだった訳ではありませんでした。
日本では皆がお互いを見守りあっているということに、良い意味で驚きました。先だって友人と一緒に駅にいたんですが、高齢の男性が突然倒れてしまったんです。周りにいた人たちは知らぬふりをするのではなく、その男性の無事を見届けるまで寄り添っていました。必要があるから、他人でも助け合って一つのコミュニティを成す…これは今まで体験したことのないものでした。
ICUでも同じことが言えます。本当に誰にでもアプローチできて、助けてもらえます。 どんな新しい環境にも良い面と悪い面がありますが、日本とICUに住んでいてよかったと思えることですね。
JICUF: ICUで達成したいことは。
やりたいことのリストがあるんですよ! ありがちかもしれませんが、多くの友人を作ること、よい成績を修めること、それから留学も検討したいです。ICUではダブルメジャーまたはメジャー、マイナーを修めることができるので、特に興味があります。
あと、大学内の目標だけにとどまらず、広い視野をもって行動したいです。ICUは便利なので、キャンパス内でも楽しい学生生活を送れますが、私はもっと外に出て東京をこの目で見て回りたいです。 いくつかのサークルに入会しましたし、学生リトリートを手伝うなど、期間限定の小規模イベントにも関わっていきたいと思います。
最近気になっていることの一つは、ICUになぜ公式マスコットがないのかということです。 ICU祭の「ばか山ちゃん」はありますが、アメリカだったらどの大学にもある公式マスコットがないんですよね。他の日本の大学でもはやり始めていますし、日本ではマスコット文化が浸透していますよね。 ICUの広報課や学生課を何度か訪ねましたが、なぜマスコットがないのか誰も知らないようです。近々学部長とお会いする予定ですが、これからの4年間、ICU公式マスコットの立ち上げに取り組むかもしれません。
JICUF: 在米のUSSI支援者へのメッセージは。
このような奨学金があるとは知らず、本当に素晴らしい機会をいただきました。USSIがなければ、日本の大学に進学することはできなかったと思います。多くのプラスとマイナス面を考慮したうえでICU進学を決めましたが、寄付をしてくださった方々、先生、そしてJICUFのお陰でこの選択肢がありました。
奨学金のプロセスは、学生がこのような機会があることを知る前から始まっています。アメリカ人学生に日本の大学で勉強する機会を与えようというアイデアがまずあり、それが実を結んだものです。学生は、奨学金の設立や運営にかかる労力や支援について思いを巡らすことはありませんが、それはご支援者やJICUFが資金繰りや広報活動を一手に引き受けてくださってくださるからです。USSI奨学生として、この機会を最大限に活かしたいと思います。
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山口 ジュリアさん
山口 ジュリアさんは、現在18歳。生後11ヶ月の時にカザフスタンのアクトベから養子縁組でアメリカにわたって以来、ホノルルに住んでいます。 父方のご家族が日系である上、多様な文化が入り混じるハワイにとりわけ強い影響を与えた日本文化に触れて育ち、中学と高校時代には日本語を勉強しました。 ジュリアさんは、さまざまな人々とつながり、それぞれのストーリーや文化を学び、彼らや自分を取り巻く世界についての理解を深めたいと考えています。趣味は、歌うこと、走ること、詩を書くこと、イベントを企画すること、音楽を聴くこと、そして友達と星空を眺めることです。
JICUF: USSIに応募した動機・きっかけは。
高校4年生だった時、ICUについては既に知っており、出願を考えている大学の奨学金を探していました。家族と一緒にリサーチしてUSSIを見つけました。このイニシアチブのコンセプトに非常にひかれ、 オンライン説明会に参加して、ぜひ応募したいと思いました。
JICUF: 「ICUならではの経験」はどんなものだと思いますか。 ジュリアさんの今までのICU体験は。
人とのつながりです!
入学する前、ソーシャルメディアで多くのアウトリーチが行われ、その中に学生が運営するICU 2025インスタグラムがありました。 日本に渡航できなかった学生はインスタでつながることができ、存在を認めてもらえたと感じたのではないでしょうか。 私も投稿してみましたが、すぐに海外、日本、そしてキャンパス内から多くのメッセージを受け取りました。皆と会える日が早く来ることを願っています。
オンライン授業は、対面授業と比べて人とつながることが難しいと感じます。でも、先生方の多くは、クラスメートが互いに知り合う時間を設けてくださいました。ズームで学生をランダムにブレイクアウトルームに振り分けるのは、ソーシャルメディアへの投稿をためらうシャイな学生にとっては、人とつながる良い方法だったと思います。たくさんの素敵な人と出会えて、友情も芽生えつつあります。人と直接会うことができないので、テクノロジーが不可欠な役割を果たしています。今のところ、ICUコミュニティは国際的でフレンドリーという印象です。 みんながお互いとつながり合い、取り残される人がいないようにという配慮が感じられ、本当にうれしいです。
そしてもう一つは、リベラルアーツ体験です!
今学期とっているのは、教育学、国際関係学、開発学の基礎科目です。これらの授業では、一般教養科目とは異なり、各科目をより深く学べるように思います。先生方は、リベラルアーツのカリキュラムでは、批判的思考が共通のツールだと強調されますが、とても心に響きました。まだ一学期の前半が終わったばかりですが、既に批判的思考ができるようになったと感じています。今後数年間に、より広い視野で物事を捉えられるようになることが楽しみです。
JICUF: ICUで達成したいことは。
まずは日本語の上達です。J7(JICUF註:ICU日本語プログラムの最終段階)をもうすぐ終了するところです!
他には、今夢中になっていることや、関心のある学術分野をどのようにキャリアにつなげていくかを思案中です。今は国際関係学を専攻したいと考えており、外交に興味を持っています。今後気が変わるかもしれませんが、ICUでは2年間専攻を決定しなくてよいので助かります。
JICUF: 在米のUSSI支援者へのメッセージは。
この奨学金を支えてくださる皆様、本当にありがとうございます! アメリカには素晴らしい大学がたくさんあるので、アメリカの学生の多くは海外に出るのをためらいがちです。けれども、他の国を訪れ、その地の文化や考え方に触れることは大切です。自分とは異なる人に対する思いやりと理解は、社会で生きていく上で役立ちます。自分の国を出て色々見てみたいと考える学生は大勢いますが、どこから始めてよいか分からないので、このような奨学金が存在し、その情報を拡散してくださることは非常に重要だと思います。ご支援者の皆様は、一見困難に見える留学を可能にし、学生が新しい冒険に旅立つ際に安心感を与えてくださいます。USSIのような奨学金は、国家間に壁を作るのではなく、橋を架けるという重要な役割を果たしてくれるのです。