ICU学部生が第12回宇宙法模擬裁判大会日本大会に出場、山﨑千鶴さんが受賞
3月12日、松田浩道助教(法学)の学生4名が、デジタルハリウッド大学駿河台キャンパスで開催された第12回宇宙法模擬裁判大会日本大会にICUの代表チームとして出場しました。日本国際基督教大学財団(JICUF)は松田先生が学生を同大会並びに2017年7月に東京で開催されるジャパンカップ(国際法学生交流会議主催)、ジュネーブで開催されるネルソン・マンデラ世界人権模擬裁判大会に出場するための資金として、681,000円の助成金を提供しました。
宇宙法模擬裁判大会に出場したのは、山﨑千鶴(やまざき ちづる)さん(教養学部3年)、荒金昴(あらかね すばる)さん(教養学部2年)、鳴島歳紀(なるしま としき)さん(教養学部2年)、中来田桃(なかきた もも)さん(教養学部1年)でした。
大会ではICU、京都大学、東京大学、東洋大学、早稲田大学、宇宙開発フォーラム実行委員会の合計6チームに所属する29人の学生が競い合いました。
模擬裁判の議題は「月面基地と宇宙条約からの脱退に関する事件」でした。大会では、裁判官役を務める大学教授等の前で各チームが口頭弁論を行い、質問に答える法的技術を競いました。
総合優勝チームは早稲田の国際法研究会でしたが、ICUの山﨑さんが被告弁論第3位を受賞しました。
松田先生と、出場者4人にコメントをお願いしました。
松田浩道先生
本学学生の模擬裁判大会における受賞は2016年7月のジャパンカップに続くものです。これらの輝かしい成果は、本学が誇るリベラルアーツ教育の真価を発揮したものといえるでしょう。本学の学生は1年次から徹底的にクリティカルシンキングの訓練を受け、現実に生じうる極めて難しい問題に対して自分たちだけで学術文献を調査し、説得的な議論を組み立てる高度な能力を身に付けます。これは対話による紛争の平和的解決のために不可欠な技術です。今回の宇宙法模擬裁判大会においては、法学分野にとどまらず宇宙物理学の論文を幅広く調べた学際性にもICUらしさがありました。本学の学生が現実に世界で生じている国際紛争の平和的解決に対して大きく貢献することを期待しています。
山﨑千鶴さん
今回の模擬裁判大会は、私にとって2回目になるのですが(前回は国際海洋法)、参加者が前回の2人から4人に増え、とても楽しいものになりました。宇宙法という比較的新しい法分野、かつ「衡平と善」というICJでも明確に法解釈が為されていない部分における議論だったので、参加人数は増えたものの議論自体が複雑化し困難ではありました。しかし、その中でもICUのリベラルアーツを活かして他分野の先生にお話を伺ったり、ICU図書館の文献を大量に漁ったりする作業、チームのみんなと常に熱くディベートする経験は、自分の知的好奇心を刺激するものであり、かつ自分の宇宙、そして法学に対する思いを強めるものになりました。これからの課題があるとすれば、ICUにおける模擬裁判の参加人数をもう少し増やし、文献の調査・推敲を効率化して、準備書面や議論の質を高めることだと考えます。また自分自身の課題についても、これから、国際法をはじめとし、様々な法体系についての理解を深め、ICUだからこそ出来るような宇宙法の研究をしていきたいと考えております。
荒金昴さん
今回、本大会に参加することが出来て、とても満足しています。準備段階で沢山の文献や判例にあたったり、今までに知らない法学の世界に触れることがあり、とても有意義な体験でした。本番ではなんと、調べていた文献の著者が審査員だったりと、とても緊張しましたが、よい弁論ができたと先生や他のメンバーに優しい言葉を頂き、嬉しく思います。また、機会があれば、挑戦したいですし、より多くの人にも模擬裁判の魅了について知って欲しいです。
鳴島歳紀さん
反省点は本格的な動き出しが遅かったことです。授業自体は存在しその中で条文を確認したりコンプロミを読み込んだりはしていたのですが、皆の本番までの取り組み方のイメージが違い、毎週毎週確認したことを蓄積していけず何度も何度も同じ議論が出てきてしまったりして進むのが遅れました。しかしいざ書面を書くとなったときに、知らなきゃいけないこと調べないといけないことが具体化されて各自リサーチに乗り出して一番伸びて理解が深まりました。ただ問題だったのが、この書面を書き始めるのが遅すぎて、前半の時間が薄くなったこと、一番時間と負担のかかるリサーチの時間がテスト期間と被ってしまい皆苦しい思いをしたこと、そして本当に必要な法学的知識の補充等細かいところに手が回らなくなってしまったことです。
満足したことは2つあって、一つは法の実際の運用についての体験を得られたことです。特定の文言を解釈するときに判例をどのように使うだとか、文献のリサーチのコツだとかを知ることができました。また日本語が未熟であることを自覚することができました。普段は英語ディベートをやっていて表現力の不足は第二言語だからだと思っていたのですが、むしろ日本語のほうがバリエーションが少なく、また敬語が凄く雑であることを認識でき、過去の大会の映像等を研究し、表現を是正するように動けたのが自分にとってとても有益であったと思います。どちらも模擬裁判という機会が無ければ得られなかったものであると考えると、やはり思い切って参加してみて本当によかったと思います。
中来田桃さん
今回は授業を聴講という形で準備と大会に参加したのですが、この経験を通して身につけたリサーチ力、チームワーク、論理的思考力と弁論力は非常に価値のあるものだったと思います。ディベート部での活動を通じて慣れている即興力とは逆にしっかりとした証拠や緻密なリサーチが必要とされることに最初は戸惑いを覚えましたが、松田先生と先輩方のおかげで何とかやり抜くことができました。大会当日は、弁論が思ったよりもスムーズに進み、裁判官の質問にも対応できたことが楽しかったです。また、原告と被告両側にも正当性がある、という点からICUの授業で習った領土問題や紛争解決の難しさを実感しました。宇宙開発が進む未来の発展には、更なる国家間の法的課題が増えていくことから、技術と法整備の兼ね合いに興味も出てきました。この問題を理解するためには、法の知識が不可欠なため、これからの勉強を頑張ろうと思います。今回は、この実りある経験を支援してくださった日本ICU財団の皆様に感謝を申し上げます。
皆さん、ご健闘おめでとうございます!今後一層のご活躍を楽しみにしています。
写真:神尾葉南