ICU平和研究所が「国際法における『戦争難民』そして市民社会の役割」国際シンポジウムを開催
9月23日(土)、ICUの平和研究所と日本弁護士連合会が「国際法における『戦争難民』そして市民社会の役割」と題した国際シンポジウムを東ケ崎潔記念ダイアログハウスにて共催しました。ICUの新垣修教授は、今年6月にシンポジウムの開催費用としてJICUFより80万円の助成金を受賞しました。
日比谷潤子学長による開会の挨拶の後、新垣教授がシンポジウムの背景と趣旨を説明しました。1951年の難民条約の下では「戦争難民」は特定の場合を除き難民とは認定されなかったものの、その後「戦争難民」にも国際的保護を与えるための努力が行われてきた背景が紹介され、シンポジウムの目的が「戦争難民」は「条約難民」かを問い、市民社会がその保護に果たしうる役割について討議することであることが明らかにされました。
午前の部では、海外から招聘された2名の著名な専門家が講演を行いました。まず、ユーゴ・ストーリー英国上級審判所裁判官が、「国際法における『戦争難民』」について講演しました。ストーリー判事は、国際法における「戦争難民」の地位に関する歴史的概観を示した後、昨年12月に発行されたUNHCRガイドライン12の新規定について説明しました。新ガイドラインは、国家による難民認定に一貫して国際法が適用されることを目指し、紛争や暴力を逃れた人々も難民と認める可能性を示しています。判事はガイドラインの意義を認めつつ、残存する問題点を指摘し、さらに解決策も提案しました。
次に、マールティンシュ・ミッツ欧州人権裁判所裁判官が「難民、武力紛争と欧州人権裁判所」と題した講演を行いました。ミッツ判事は、多数の判例に言及しつつ、欧州人権条約などの地域条約を通して「戦争難民」に提供される補完的保護について説明しました。
EU法と庇護法を専門とする中央大学の中坂恵美子教授がコメントし、2名の講演者とディスカッションを行いました。
午後の部では、市民社会の役割に焦点が当てられました。笹尾敏明ICU平和研究所所長による挨拶の後、難民支援教会(JAR)代表理事の石川えり氏が「市民社会は『戦争難民』の保護のために何ができるか?」と題した講演を行いました。石川氏は1970年代以降の日本政府による難民受け入れ状況を説明すると共に、市民社会がプライベート・スポンサーシップを通して難民の受け入れを開始したことを紹介しました。
続いて、JICUFコミュニケーションズ・ディレクターの高田亜樹が「大学は『戦争難民』の保護のために何ができるか?」というテーマで講演し、ICU、JICUF、JARが共同で設立したシリア難民のための奨学金制度「シリア人学生イニシアチブ」を紹介しました。
ICUのアレン・キム准教授が両者の講演についてコメントし、市民社会が果たしうる役割についてのディスカッションをリードしました。休憩を挟んで、川内敏月UNHCR駐日事務所副代表と弁護士の小田川綾音氏が4名の講演者とパネル・ディスカッションを行いました。「『戦争難民』とは?」、「UNHCRガイドラインは拘束力がないにもかかわらず欧州では尊重されているのに対し、なぜ日本では尊重されないのか?」、「保護とは何か?」、「市民社会は国際難民法に貢献できるか?」などのテーマについて議論が交わされました。
シンポジウムには、学生、教員、弁護士、一般の参加者80名近くが出席しました。聴衆からも多数の質問があり、活発な議論が行われました。
最後に弁護士の関聡介氏が要約と提言を行い、日本弁護士連合会・人権擁護委員会副委員長の川上詩朗氏の挨拶をもってシンポジウムは幕を閉じました。
閉会後、シンポジウムの企画運営に関わったICUの教授陣と日本弁護士連合会会員の方々、4名の講演者がダイアログハウス7階のファカルティ・ラウンジに集まり、レプションが開催されました。