ICU ファームプロジェクト
ICUファームプロジェクトがJICUFとICUの連携により2024年春に始動しました。ICU献学当初キャンパスにあった農場を復活させ、ICUの豊かな自然環境を活かして食と農を中心とした学びの場を提供することを目指す本プロジェクトは、ICUの2021〜2025年度中期計画「リベラルアーツの社会実装へ向けて」にも合致しています。
実はこのファームプロジェクトの初期構想はコロナ前の2018年に遡ります。JICUF代表のポール・ヘイスティングスと副代表高田亜樹が主導し、ファームプロジェクトに関する会議がICUにて開催されました。ICUの教授と学生、有機農法に取り組む卒業生、三鷹市役所と農協の方々を迎えて、ICUキャンパスにてどのようなプロジェクトが可能か議論されました。しかし、プロジェクト案が次のステップへ進む前にコロナ禍となってしまい、宙ぶらりんの状態が数年続きました。
そして2023年秋、ポールが別プロジェクトで既に支援を頂いている卒業生の方と懇談する機会があり、ファームプロジェクトとサスティナビリティへの熱い思いを語ったところ、彼女はその場でファームプロジェクトへの支援を約束してくださり、プロジェクトの実現が可能となりました。
2024年4月、ICUは初代ファームマネージャーとして堀内千種さんを採用しました。堀内さんは2024年3月にICUを卒業(環境学専攻)、在学中は学内の農業プロジェクトに深く関わっていました。ファームプロジェクトの内容や今後の展望について、堀内さんにお話を伺いました。
JICUF: ICU在学中の学びと、ファームマネージャー着任に至る経緯をお聞かせください。
堀内さん: ICUでは環境分野を中心に学びました。授業では地球規模の環境問題に対して自分たちができることは何かについて考える機会が多くあり、それがきっかけで在学中は身近な食と、食の生産に関わる農業に特に関心を持ちました。授業外では、近隣農家の農作業の手伝いや、子ども向けの農業体験のサポートに従事しました。大学4年次の休学期間には、オーストラリアのタスマニア州にて2か月間のファームステイをし、食や農に生涯携わりたいという想いを再確認する経験となりました。
卒業を目前に控えた中、ICUでのファームマネージャー募集について知り、母校でこれまで以上に食や農を通して学びにつなげる仕事ができる機会に「これだ!」と思って応募しました。
JICUF: ファームプロジェクトのビジョンは?
堀内さん: 既に学内では、わさびの栽培や養蜂など、食や農に関する活動が行われていますが、それらに関わる学生は限られており、キャンパスの自然を教育に活かしきれていないのが現状です。ファームプロジェクトでは、「食」「農」の切り口からキャンパスの自然に関わる活動を推進し、より多くの学生が土に触れたり、食や自然に関心を持つ機会をつくっていきたいと考えています。わさび田や果樹園など、キャンパスで農に関わる活動をするエリアを総称して「ICUファーム(仮称)」とし、各活動の活性化や全体の連携を図っていきます。
プロジェクトを進めていくうえでは、実際に手を動かし、五感を使って食や自然を感じる「体験的学び」の場になること、いろいろな立場の人が楽しく作業をしながら交流する「協働作業」の機会になること、そして竹や木などの自然資源を活用し、キャンパスの森の保全に貢献する活動になること、という3つの観点を特に大事にしていきたいと考えています。
小雨降る中、学生達と一緒に整地作業(写真:堀内京香)
JICUF: ファームプロジェクトの具体的な内容は?
堀内さん: 既に稼働しているわさび田をはじめ、これまで学生団体が活動してきたエリアや今年の冬から植え付けを始めた果樹園など、まずは各エリアの整備を学生と一緒に進めているところです。気軽に参加できる体制を継続しつつ、特に積極的に取り組む学生にはより主体的に関われるインターン制度などの仕組みづくりにも取り組んでいく予定です。
ある程度の収穫が得られるようになったら、ICUで採れた食材を学食に提供したり、食材を使ったイベントを開催するなど、いろいろな方法で活用してきたいと考えています。一人ではなく、学生や教職員、地域の人などいろいろな方の知識やアイデア、協力を得ながら、一緒に作りあげていくプロジェクトにしていきたいです。
地域のボランティアと共に作業を進めているワサビ田(写真:三浦琴)
JICUF: 堀内さんに案内してもらい、各プロジェクトの予定地を見学しましたが、雑草を刈ったり整地作業などの下準備だけでも膨大な人手と時間が必要な状況です。想像しただけでめまいがしそうな作業の向こうに、堀内さんが見ている数年後のファームプロジェクトはどんな姿なのでしょうか?
堀内さん: 10月上旬にバーモント州のミドルベリー大学のファーム「Knoll」を視察してきました。そこで最も印象的だったのは、単なる農場ではなく、人々が自由に気軽に集まってリラックスできる場所になっていることでした。ICUのファームプロジェクトにおいても、ベンチやテーブルを置いて自由に休めるスペースを設けたり、使われていない花壇にハーブや野菜を植えて、日常的に自然や食を感じられる場所をつくったり、畑に限定されないクリエイティブな方法で、食や自然に関わる場づくりをしていきたいです。
ICUと言ったら?の問いに、「ファーム!」「自然!」といった答えが返ってくるほどに、今よりも多くの学生がキャンパスの自然や食に触れるようになったら嬉しいです。
バーモント州ミドルバリー大学の農園「ノール」を視察
自然をこよなく愛する堀内さん、ファームプロジェクトについて熱く語ってくれました。
今後の活躍が楽しみです。頑張ってください!