ICU UNESCOクラブのメンバーが東欧を訪問
3月12日から21日にかけて、ICUのUNESCOクラブのメンバー12名がチェコとポーランドへのスタディーツアーに出かけました。JICUFは同クラブに50万円の助成金を提供しました。学生たちは両国で複数の町を訪れ、第二次世界大戦とホロコースト、共産主義、そしてそれぞれの町がどのように悲惨な歴史を平和の構築に役立てているかについて学びました。助成金申請者の伊野つづみさん(当時2年生)をはじめ、4人の参加者に感想を伺いました。
伊野(いの)つづみさん(2年)
典型的な感想になってしまいますが、それでもやはり本で学んだことと実際に見たものの違いを実感しました。特にアウシュビッツ強制収容所では、訪問時冷たい雨と強風が吹いており、外にも出たくないような気温でした。その時に、本でただ読んでいた「寒さの中での強制労働」のつらさを肌で実感しました。ホロコーストの悲惨さを後世に伝えるにあたり、自分の経験として「あのような悲惨な歴史は絶対に繰り返してはならない」と自信を持って語り継げるようになりました。
チェコやポーランドの博物館が、ホロコーストの責任を「ドイツ」ではなく「ナチス」にあると記述していたことは強い印象を残しました。例えばナチスそのものでなく「ホロコーストを行ったドイツ人が嫌いである」など、国そのものを悪者とするような考えを抱くことを避ける良い例だと思い、日本はこのような歴史の語り方の姿勢を学ぶ必要があると思いました。
神谷宏(かみや ひろし)さん(1年)
スタディーツアーに参加しながら、いまに生きる私たちが悲惨な展示をどのように見ることが、平和の砦を築くことにつながるかがおぼろげながら見えてきました。展示を見ながら心に浮かんできた感情を(良いものも悪いものもありますが)、人間的なモラルと結びつけて考え、どうすれば悲惨な現実を引き起こさずに済むかを考えることです。
また異文化理解は、自文化理解から始まることも学びました。ヴェリーチカ塩鉱内では、キリスト教文化に囲まれながら、自分が夏に旅した日本国内の山のことを考えていました。人気のない山の中でお地蔵さんを見つけたときの感情を思い出すと、暗い坑道の中にキリスト教会を作りたいと思った感情が理解できた気がしました。
江川裕士(えがわ ゆうと)さん(1年)
まず、JICUF及びそのご関係者の皆さま、この度は我々ICUユネスコクラブ及びスタディーツアーをご支援して頂きありがとうございました。大変助けになりました。本スタディーツアーは私にとって以下の二点において意義がありました。第一にこのスタディーツアーは、私がかねてより平和構築の観点から大切にしてきた異文化理解能力について考え直すきっかけとなりました。以前私はこの能力を観念的に捉え、衝撃的な異文化体験や文学・演劇を通して、どんな異文化に触れても排外的に考えずに共生していけるよう努力することを考えていました。しかし本スタディーツアーでユダヤ博物館を訪れて、自分のユダヤ文化に対する無知に気付かされ、さらに自分がシナゴーグで自分たちの違いに不安を感じたことに驚きました。今は実践として、私個人が体験する機会を逃してきたような異文化に積極的に触れていくことがより大事だと考えています。例えば、イスラム教や中国の文化から体験していきたいです。
また私はリディツェとアウシュビッツを訪れて、ナチス幹部の他民族を絶滅させようとする思想に対する疑問が深まりました。個人的な性格から、排外的な危険思想を勉強してその影響を少しでも受けてしまいはしないかと心配なところではあるのですが、今後この点を勉強したいと思います。
権普美(ボミ・クォン)さん (3年)
UNESCOに関わる人は、教育・科学・文化の分野をはじめとする総合的なアプローチで、「世界中の人々の心のなかに、いかに平和の砦を築くか」を考えていると、フィールドの職員から伺ったことがあります。
福沢諭吉の学問のすゝめの冒頭では、「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」とあります。がしかし、世界史を振り返ってみると、人の傲慢や欲によって、私たちは気付かぬ間に差別と偏見を生みだした張本人になりました。
平等、平和、人権保護などを訴えるのではなく、むしろ逆方面に突っ走って、十人十色の人生を歩むはずだった人々に酷い死を与えてしまったことを、まず事実を認知し、反省し、二度と繰り返さないために、自分たち個人で何ができるかを考えるまでに至りました。
具体的にどのように行動にしていくかについては、まず私たちが現地で感じたことを報告会や報告書を通して、語りを共有することです。そして一人でも多くの世界中の老若男女に、アウシュビッツやテレジンの収容所に訪れることを勧めると思います。事前に勉強会や、現地でのディスカッション、帰国後の振り返りや報告会にて、改めて考えること、学ぶこと、教えることができる環境にいることのありがたみを感じました。
ユネスコクラブ史上初のヨーロッパのスタディーツアーにて、チェコとポーランドに行けるよう、支援してくださったJICUFの皆様に感謝申し上げます。