JICUF助成金受賞者スポットライト:ネパールでのコミュニティハウス建設プロジェクト
昨年秋、当時ICU教養学部2年生だった小俣歩嵩(おまた ほたか)さんが「ネパールコミュニティハウス復旧作業プロジェクト」を実施するためにJICUF学生トラベル資金を申請し、42万4,000円を受賞しました。このプログラムを企画した大学間ボランティアグループ FIWC (Friendship International Work Camp) に所属する小俣さん他7人のICU生は、2015年のネパール地震の復旧作業が続くラムチェ村を訪れました。8人は2組に分かれ、それぞれ2月20日と3月8日に20日間の旅に出発しました。復旧作業の他、現地の人々との交流活動もおこないました。JICUFのサポート資金は航空券とワークショップの材料費に当てられました。小俣さんと、ボランティア活動に参加した北野貴史(きたの たかし)さん、野口寛菜(のぐち ひろな)さんにお話を伺いました。
JICUF: プロジェクトの背景と目的を教えてください。
小俣歩嵩さん(以下敬称略): 2015年の大地震の復旧作業に当たる村の方々を支援することがプロジェクトの目的で、彼らの生活を立て直す意欲を支えることが、始めた動機です。
北野貴史さん: 大地震で大きな被害を受けた村の復興に協力し、村人たちと共同作業をするなかで発展途上の現実を知り、できるだけ多くの知識を得ること。
野口寛菜さん: 村の人々の復興への意識を前向きにすることが目的でした。
JICUF: プロジェクトを実施して、もっとも満足したのはどのような点ですか?
小俣:プロジェクトを予定通り終えて満足しています。去年と比べて村の方々、とりわけ大人の方たちとよりよい関係を築けたことを嬉しく思っています。
北野:道半ばではあるが、コミュニティハウス建設を目標通り進められたこと。
野口:今年はプロジェクトの質を改善しようと努め、成功したのが満足でした。去年はコミュニティハウスの建設に集中し、村の方々と触れ合い、彼らの生活や考えについて知る機会がなかったことが残念でした。交流と情報収集をおこなわなかったために、プロジェクトの意義について疑問が残りました。そこで今年は建設活動に加え、現地調査を通して村の実情をより正確に把握し、村の方々と触れ合う時間を増やしました。さらに、カトマンズでも調査をおこない、都市部と地方の生活も比較しました。これらの調査で貴重な情報を収集できたため、今後参加する人たちには、プロジェクトの本質について考え、それに見合う活動をしてもらえると思います。
JICUF: プロジェクト中、もっとも困ったことは?
小俣:困ったことは二つありました。まず、私たちの建築に関する知識や技術が不十分だったため、家屋の建設に関しては完全に村の方々に依存しなければならなかったことです。まれに作業が難しすぎて、私たちには何もできないこともありました。もう一つは、村の方々全員に復旧作業に関わっていただくことができなかったことです。できるだけ多くの方々に自発的に関わっていただきたかったのですが、実際に作業してくださった方は少数でした。村のためのプロジェクトだったので、多くの方に参加していただきたいと思いましたが、思うようにはいきませんでした。
北野:すべての場面における村人とのコミュニケーション。
野口:もっとも難しかったのは、メンバーにプロジェクトの問題点を理解してもらい、全員の意見を聞きつつ良い結果を得るために新たな道を探ることでした。FIWCには複数の大学の学生が所属しており、メンバーの能力も様々です。メンバーの半数はプロジェクトに問題があり、改善の必要があるとは考えていませんでした。リーダーとして、彼らに問題点に気づいてもらい、グループとしての課題と個人としての課題の両方に同時に取り組むことがとても困難でした。
JICUF: プロジェクトを通して学んだことは?
小俣:このようなボランティア・プロジェクトは、村の方々中心におこなわなければならないと悟りました。今回のプロジェクトは、我々学生が企画・評価・実施しました。そのため、十分村の役に立つことができませんでした。村人一人一人の個性や村の状況に合ったプロジェクトを実施するためには、彼らが自らの視点で物事を決定する必要があります。ボランティアが満足しても、村にとっては何のプラスにもなりません。村人を中心に据えなければ、彼らに繁栄と成功をもたらすことはできません。
北野:ひとの心を動かすことの難しさ。 ボランティア活動の多様さ。
野口:グループで良いプロジェクトをつくる方法を学びました。頭で考えるだけでは不十分で、質の高いプロジェクトをつくるためには、信頼できる人からフィードバックをもらったり、本を読んで情報を集めたり、仲間と相談することが重要です。今回、これらのステップをすべて踏襲できたかはわかりませんが、今年得た教訓をもとに、次回はより良い企画ができると思います。
JICUF: プロジェクト全体への感想は?
小俣:プロジェクトには半ば満足していますが、まだまだ改善できると思います。村の人々に自ら方向性を決定してもらい、その個性に合ったプロジェクトを作るのが次回の目標です。
北野:ボランティア的活動に対する自分の態度は、自己満足が他の人よりも強いかもしれない。FIWCに参加して以来ボランティアとは何かについて度々考えさせられた。ボランティアは他人のためにやるものか、それとも自分のためなのか。現地のニーズと自分たちの価値観のどちらを優先するべきか。ワーク内容は学生団体のキャパに見合ったものなのかどうか、などなど。これらの問いの答えは絶対に1つではあり得ないし、その時々の状況によって異なってくるものだと思う。ただ、自分のボランティア的活動をする上での信念は、その活動に強い関心を持ち、出来るだけ多くの事実を認識することである。
野口:この経験を通して強くなり、能力を高めることができたと思います。プロジェクト終了後も新たな課題が出てきています。今後さらに努力を続け、他のキャンプのFIWCメンバーにも働きかけたいと思います。今年の目標は、国際ボランティアに関する新しい考えをFIWCメンバーに伝え、組織全体として批判的思考を通してよりよい結果を生み出すことです。JICUFのご支援なくして、計画通りにプロジェクトを進めることはできませんでした。ご支援に感謝します。
小俣さん、北野さん、野口さん、プロジェクトの完了おめでとうございます!
秋期JICUF学生サポート資金への応募期間は2019年8月26日に開始します。