JICUF助成金受賞者スポットライト:ペルーにおける教育プログラム
2018年秋、当時ICU教養学部4年生だった山本和奈さんが「Educate For ICU アンバサダープログラム」を実施するためにJICUFより51万円の学生アクティビティ資金を受賞しました。今年3月、山本さんは4名のICU生と2名の他大学の学生と共にペルー・トルヒーリョ市を訪れ、3つの学校でSTEMと英語のワークショップを開催しました。JICUFの資金は航空券、宿泊費、プロジェクトの材料費に当てられました。このプロジェクトの目的は、ICU生がワークショップで子供達と接しながら大学で学んだスペイン語を使い、プロジェクト管理のスキルを身につけることでした。以下は山本さんからの報告です。
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JICUFからいただいた資金で、ユース・アンバサダーと呼ばれるICU生たちは、ペルー・トルヒーリョでNGO「Educate For」のプロジェクトを2件実施することができました。このNGOは私が大学3年次にチリに留学中に設立したものです。教育と社会奉仕活動に強い関心があった私は、学生や社会人が国境を超えて協力し合える組織を作りたいと考えたのです。ペルーでは、トルヒーリョにある学校(Colegio Pampas de Valdivia)で英語とSTEM(科学・技術・工学・数学)の2つの分野のワークショップを開催し、70人の生徒に接しました。
自由、健康、平等が保証される持続可能な社会で暮らすことはすべての人の権利です。このような社会を実現するためには、若い世代がSTEM教育を通して批判的思考、問題解決能力、十分な情報収集に基づいた決断能力などを身につける必要があります。しかし、ラテンアメリカ諸国、とりわけペルーではSTEM教育が遅れています。OECDの2012年の国際的な生徒の学習到達度調査によると、ペルーの生徒は数学と自然科学の成績が65ヶ国中最下位でした。また、ラテンアメリカにおける第2回地域比較分析調査でも、ペルーの生徒は地域平均を下回る成績でした(UNESCO、2008年)。小学校3年生の算数では、生徒の半数以上が5段階中最も低い2段階の成績でした。さらにこの調査では、都市部と地方の生徒の成績に大きな隔たりがあることも明らかになりました。地方の生徒の成績は都市部の生徒の3分の1にしか満たなかったのです。これらの調査結果から、ペルーのSTEM教育は極めて不平等であることがわかります。
STEMプロジェクトは3月に3週間かけて4つの教科で実施しました。ペルーの生徒たちにSTEMに興味を持ってもらうことが主な目的でした。プロジェクトは放課後に開催されましたが、子供達は元気いっぱいで、家に帰って昼食を食べることも忘れるほどでした。英語のプロジェクトは学校の授業時間内と土曜日の午前中に、32人の6年生を対象に行いました。大学生のアンバサダーが、教材からレッスンプラン、プロジェクトの評価方法に至るまで、すべて自分たちで作りました。
期間中、ICU生とEducate Forのメンバーがプロジェクトの企画管理と、異なる文化的背景を持つ人々と協力することを学べるよう注力しました。言語という大きな壁を乗り越えて、ユース・アンバサダーたちは努力してEducate Forのペルーチームとコミュニケーションを取り、STEMと「English for Everyone」の二つのプロジェクトを立ち上げました。ユース・アンバサダーはプロジェクトの実施前からスペイン語を学んできました。私はアンバサダーたちにスペイン語を教え、ペルーチームに英語を教えました。プロジェクトを作り上げる過程で、新たな関心を見つける学生もいれば、逆に関心のないことが明確になった学生もいました。
外国でプロジェクトを企画運営することは起業と同じくらい難しく、起業の仕方を学ぶ一つの方法だと考えています。苦労もしましたが、プロジェクトが成功してとても嬉しく思います。プロジェクトの過程で学んだことは、ユース・アンバサダーにとっても私自身にとっても、結果よりも大切だったのです。スペイン語に魅せられ、学習を続ける決意をした学生もいた一方で、日本が自分にとって居心地の良い場所だと再認識した学生もいました。また、プロジェクトがきっかけで教育に関心を持ち、将来子供と接する仕事がしたいと、自分で新たなプロジェクトを作る学生もいました。
「English for Everyone」は今も続いており、Educate Forペルーチームが毎週土曜午後にPampas de Valdiviaの生徒たちに英語を教えています。