JICUF助成金受賞者スポットライト – モダン・ダンス・ソサイエティ「ICU x 台湾 x NYダンスプロジェクト」
ICU教養学部4年生の山縣愛(やまがた・まな)さんは、モダン・ダンス・ソサイエティ(MDS)によるプロジェクトを行うため、この春JICUF学生アクティビティ資金を申請し、47万4,500円を受賞しました。この資金を使って、山縣さんはNYCで活躍する振付師でICU卒業生の篠原憲作さんと、台湾の舞踊団Seed Dance Companyを招いて、「ICU x TAIWAN x NY DANCE PROJECT」に取り組みました。9月18日から20日にかけて、共同制作した作品「Wǔ Fēnzhōng(中国語で「5分間」の意)」をディッフェンドルファー記念館西棟(「新D」)の多目的ホールで4回に渡り公演しました。本プロジェクトを企画した山縣さん、照明演出を務めた皆川勇太さん、ダンサーとして参加した鄭優希(チョン・ウヒ)さんと権普美(クオン・ボミ)さんにお話を伺いました。山縣さん、皆川さん、権さんはICUの学部生、鄭さんは大学院生です。
JICUF:このプロジェクトについて教えてください。目的は何だったのでしょう。
山縣:プロジェクトの目的の一つは、モダンダンス部(MDS)をICUの人々に知ってもらうことでした。MDSは30年以上続いている団体ですが、現在は部員が少なく、今年で幹部を務めている3名が卒業してしまうことから、「卒業前に自分たちには何ができるか。」と考えていました。そんな時、部のOBである篠原さんに声をかけていただき、ICUでこの企画が実現しました。私たちは大学に入ってから踊り始めた初心者なので、自分たちの力で独自に作品を作って披露するには至らず、モダンダンスを披露する機会はほとんどありませんでした。その一方で、自分たちで公演を打って先輩方に観に来てもらうことが入部当初からの夢でした。篠原さんと作品を一緒に作るにあたって、MDSのメンバーだけでなく、より多くの人にモダンダンスを紹介し、踊る楽しさを共有することはできないかと考え、部員以外からも参加者を募ることになりました。Facebookなどで宣伝したところ、初心者から経験者まで学年も様々に総勢12人の参加者が集まりました。私たちMDSが今回、最も伝えたかったことは、「誰でも楽しく踊れること」であり、これをテーマに日台米のダンスプロジェクトを企画しました。
鄭:私自身もダンス経験が少ないことから、踊りの「型」にはまってしまうことが多く、そのことに対してコンプレックスを感じていました。モダンダンスは動きが自由であるというところに興味を持ち、このプロジェクトを通して自由に踊ることを経験してみたいと思い参加しました。
皆川:自分は山縣さんに誘われて参加しました。照明演出という役割で、3年前にMDSの公演にスタッフとして関わった経験があり、MDSの公演にもう一度関わりたいというモチベーションがありました。篠原さん達の「型にとらわれないダンス」という、表現の限界を探るようなところに興味を持ち、今回参加しました。
権:私もFacebookの参加者募集の宣伝をたまたま見て参加しました。ニューヨークと台湾から招致されたプロのダンサーとの共同制作、しかも素人でも踊れる、短期間でのプロジェクトはとても魅力的でした。私もダンスの経験が少なく、高校で一年間、韓国の伝統舞踊を練習したぐらいです。韓国の伝統舞踊はモダンダンスとは全く異なり、型のあるゆっくりした動きであるため、正直ワクワクするものではありませんでした。モダンダンスは自由に創作できることから、踊りを通して自分の新しい一面を発見できるのではないかと思い、挑戦してみたいと思いました。ダンスの企画や通訳に参加した経験はありますが、一度は自分が舞台に立って輝きたいという気持ちもありました。
JICUF:プロジェクトを終えた感想は?
山縣:無事に終えることができて、安心しました。準備に7カ月を要した分、嬉しさはとても大きかったです。台湾からのダンサーの到着が本番の前日であったことや、台湾からのダンサーたちとの英語でのコミュニケーションに苦労しました。難しいことをやり遂げたという達成感もあり、海外の人と英語でやりとりをしながら一緒に作品を作る機会も少なかったので、すごく良い経験になったと思っています。普通のダンスの企画は客席と舞台がはっきり分かれていることが多いので、今回はその境目をぼやかすことができたことも嬉しいです。
権:私は一年休学したため大学5年目で、同期の友人達は卒業してしまっているので、卒業論文と向き合いながらの辛い時期にこのプロジェクトに参加することができて良かったです。今まで出会ったことのない人と仲良く体を動かすことで、一瞬だったけれど濃密な関係が築けて、最初から最後までありのままでいられて、かつそれを受け入れてくれる仲間たちと出会えて良かったと思います。
鄭:プロジェクトの準備をしている最中は、こんなに短い時間で人に見せられるパフォーマンスができるのか、また自分も休学していたため、知らない人がたくさんいるという不安もありました。でも、一緒に体を動かして触れ合うことで、お互いのことをよく知ることができた気がします。
山縣:1週間の練習ですれ違ったときの匂いや手の感覚でそれが誰だかわかるようになりました。今回参加してくれた人は知り合いが多かったので、どんな人かは知っていたつもりでしたが、やっぱり踊りという表現を通すと、全然違う側面が現れるように思います。参加者全員が、お互いを知ることで一つになれたこと、またこれからもその関係が続く予感がして嬉しいです。、面白いコミュニケーション方法だったと思っています。私は踊りだけではなく、企画からずっと関わってきたので、無事に終えられた安心感は大きいし、実現できたことをまだ少し信じられていないです。
JICUF:JICUFの資金はどのように役立てましたか?
山縣:このプロジェクトの予算の約9割を、JICUFの資金でカバーすることができました。ダンサーたちの宿泊費から渡航費、食事代に至るまで、あらゆる経費に充てさせていただきました。このプロダクションを実現できたことで、プロのダンサーたちから、ダンスの経験やコミュニケーションなど、お金では買えないものを得ることができました。普段は自分のために自分のお金を使っていますが、今回は他の方からいただいたお金を、他の人のために使ったことで、人との繋がりを感じました。
JICUF:この企画をサポートできて、とても嬉しく思っています。ありがとうございました!