JICUF助成金受賞者スポットライト – 西郷未希子さん「外国語・継承語としての日本語教育に関する研究」
ICU教養学部4年生(言語学専攻)の西郷未希子さんは、カナダで日本語教育の研究を行うため、この春JICUF学生トラベル資金を申請し、18万8,000円を受賞しました。研究のテーマは、海外で 外国語としての日本語教育を受ける生徒(Japanese as a foreign language (JFL) 生徒)と 継承日本語教育を受ける生徒(Japanese as a heritage language (JHL) 生徒)の教育環境の違いです。JFLは日本語を外国語として学習する生徒、JHLは日本語を母語としないが、日本語を母語とする親や祖父母のいる生徒を指します。西郷さんはこの6月から9月にかけてカナダを訪れ、JICUFの資金は航空券に当てられました。
西郷さんはカナダでの日本語教育を体験するため、バンクーバー市内の二つの日本語学校でティーチングアシスタントを務めました。両校ではJHLに対しては保育園から高校まで、JFLに対しては保育園から小学3年生までの授業を行っています。両校での仕事に加えて、西郷さんはバンクーバー最大級の日本文化コミュニティセンター、日系文化センター(Nikkei National Museum and Cultural Centre)でボランティア活動もしました。
4ヶ月にわたる研究の結果、JFL生徒にとっての最大の問題は、日本語と接する機会が少ないことだということがわかりました。彼らが日本語に接するのは、週2時間の授業時間だけの場合が多く、それすら英語を使わないと内容が伝わらないという状況でした。また高校生にとっては、年齢に見合った基礎レベルのコースがないという問題がありました。大学の授業は年齢的にはふさわしいものの、授業内容が難しすぎることが多いのが実情です。
他方で、JHL生徒は日本語の学習と現地校の両立に苦労していました。JHL生徒は日本語に接する機会が多く、日本語の授業内容はほぼ完全に理解できますが、学年が上がるほど現地校との両立が困難になります。
JFL生徒・JHL生徒はそれぞれ困難に直面していますが、西郷さんはインターネットが解決策になると考えています。研究中、インターネットを通して日本のメディアに触れている生徒と話し、それが日本語教育のモチベーションに強く繋がっていることがわかりました。先生も生徒も、インターネットの力を借りて日本語教育をより効果的に行えるのではないかと考えました。さらに、オンラインコースを取り入れることによって、JFL生徒が日本語に接する機会を増やせるかもしれないとも考えました。
西郷さんは冬学期に、留学生との交流を目指す学生クラブ、ICUHubが主催する「ランゲージ・テーブル」で研究結果を発表する予定です。「ランゲージ・テーブル」とは、一般の学生と留学生が様々な言語の練習をするための企画です。カナダの日本語教育環境について発表することで、参加者がそれぞれの出身国における日本語教育や日本国内の日本語教育と比較し、グローバルな視点から日本語教育を分析する機会を設けます。