ICUでの私の旅路 – ヴィクトリア
2022年5月、ロシアによるウクライナ侵攻からわずか3か月後、5人のウクライナ人学生がICUに入学しました。そのうちの2人、イヴァンナ・トムチシェナさんとヴィクトリヤ・コレツカさんは、公共政策・社会調査の修士課程を修了し、今春ICUを卒業しました。(二人の記事はこちら)
関西地方の企業に就職し、社会人としての第一歩を踏み出すヴィクトリアさんが、ICUでの生活を振り返ってエッセイを執筆してくれました。
約2年前に日本に来たときは、すべてが不安でした。故郷と家族、そして突然中断された生活を後にして来た私に、日本は安全だけでなく、新たなスタートの機会を与えてくれました。大学院生として、そして苦難を有意義なものに変えようと決意した人間として。
この新たなチャプターで一体何が起こるのか、はっきりとは分かりませんでした。ただ、学問的にも、精神的にも、人間としても成長したいという思いだけはありました。今振り返ってみると、この2年間は、初めてキャンパスに足を踏み入れた時には想像もできなかったほど、私の人生を大きく変えた経験だったと、心から言えます。
ICUでの大学生活は、単に知識を与えてくれただけではなく、自分自身の声を再発見する場でもありました。夜遅くまでの研究、自信喪失の瞬間、そして私にとってかけがえのない小さな勝利を通して、私は自分自身を「ただ必死についていこうとする人間」ではなく、「社会に貢献できる人間」として見られるようになりました。ブランドが広告を通してどのようにアイデンティティを伝えるかをテーマにした私の修士論文は、単なる卒業要件以上の意味を持ちました。そこには、意味がどのように生み出されるのか、物語がどのように認識を形づくるのか、そして自分自身が将来その物語づくりにどう関われるかを探る道がありました。

しかし、最も印象に残っているひと時の多くは、教室から遠く離れた場所で起こりました。経験が全くなく、運動神経も怪しいにもかかわらず、私はテニス部に入部しました。練習のたびに、挑戦し、失敗し、笑い合うことが、学業での成功と同じくらい価値のあることだと気づかされました。また、大学祭ではウクライナの伝統を紹介する機会にも恵まれました。ブースに立ち、ウクライナの文化を説明し、見知らぬ人の好奇心旺盛な質問に答え、「そんなの知らなかった」と言われるたびに、深く感動しました。分断が目立つこの世界で、こうしたつながりの瞬間は何にも代えがたいものでした。
写真(左)後藤夕
日本での生活では、日々の暮らしの中の静かな美しさも体験しました。アルバイト先まで自転車で通い、正しい敬語の使い方を学び、言葉がつっかえながらも人の優しさに触れる日々。そんな日常生活のリズムに安らぎを感じ、私は「お客さん」ではなく、この地でゆっくりと「自分の居場所を築いている人」としての感覚を持てるようになりました。
そして今、これらの経験すべてを心に刻みつつ、ずっと夢見てきたマーケティングの世界への第一歩を踏み出します。これからも学び、成長し、職場だけでなく、人生で最も困難な時期に私を受け入れてくれた社会にも貢献していきたいと願っています。謙虚さと開かれた心、そして私をここへ導いてくれた好奇心を持ち続けながら、人々を繋ぎ、変化を促し、意味をもたらす物語を紡ぐ一員でありたいと思っています。
日本は私にたくさんのことを教えてくれましたが、何よりも、人間の精神がいかに強く、柔軟であるかを教えてくれました。私はもう、日本に来た時の自分とは違います。今の自分を誇りに思い、そしてこれからも成長していく姿に、さらにワクワクしています。
