Study Abroad奨学生・東村美優さんインタビュー
JICUFは過去数年間、海外の大学で1年間学ぶICUの学生にStudy Abroad奨学金を授与してきました。今年はカリフォルニア大学バークレー校、ロサンゼルス校、デービス校、ミドルベリー大学、ギルフォード大学に留学中の5名の学生が受賞しました。
Study Abroad奨学生の一人、ノースカロライナ州のギルフォード大学に留学中の東村美優(ひがしむら・みゆ)さんをインタビューしました。
JICUF:簡単な自己紹介をお願いします。
MH:私は兵庫県西宮市の出身で、ICU入学と同時に上京しました。留学開始までの約2年半は、銀杏寮3階に住んでいました。幼い頃からずっと関西で暮らしていたので、 海外に長期にわたって生活するのはこの留学が初めてになります。
ICUではジェンダーセクシュアリティ研究(GSS)メジャーです。マイナーはまだ決めていないのですが、社会学か人類学にしたいと考えています。
音楽全般が大好きです。昔からピアノを習っていたのに加えて、高校では吹奏楽部でトロンボーンを吹いていました。ICUではゴスペルサークルに所属していて、去年1年間アルトリーダーを務めていました。この冬休みにニューヨークに旅行したのですが、ブラックカルチャーの本場であるハーレムを訪れて、教会で生のゴスペルを聞いて来ました。
JICUF:ギルフォード大学に留学されてすでに5か月が過ぎようとしています。留学生活は想像していた通りですか?驚いたことはありますか?
MH:長期留学をするのが高校生の時からの夢だったこともあり、それが現実となっていることが未だに信じられない気分です。そして、自分の専攻であるGSSの分野において、人種・エスニシティ・階級・宗教の面からアプローチできる環境にいることを日々感じているところです。そのような意味では、私がアメリカに来た目的は十分すぎるほどに達成されていますし、想像通りだったと言えると思います。
そのせいか、実はこの5ヶ月間全く辛いと感じたことがありませんでした。今回が初めての長期留学ということもあり、留学に行く前は、「ホームシックになるのかな」とか「日本に帰りたくなるのかな」と心配していました。ですが、留学を開始してから今までずっと、「日本に帰りたくない」という気持ちの方が大きいです。これはギルフォード でできたたくさんの友達のおかげでもあります。本当にありがたいです。
驚いたことといえば、ギルフォード・カレッジ はたくさんのコミュニティサービスを行っていて、地域のコミュニティに深く根付いていることです。例えば、地域の移民の子供たちをキャンパスに招いて一日遊んだり、移民の家族が新しい住居を見つけるまでの住まいの提供をしたりしています。私も何回かコミュニティサービスのお手伝いをさせてもらいましたが、今まさにアメリカ社会で起こっていることに真正面から向き合える貴重な体験でした。また、秋休みには、竜巻で家を無くした方々のために新しい家を建設するプロジェクト(Quaker Work Trip)に参加してきました。一大学として学生に学習の機会を与えるだけではなく、地域が抱える問題を積極的に解決していこうとする姿勢に驚かされましたし、たくさんの学生がコミュニティサービスに参加していることにびっくりしました。ギルフォード が地域のコミュニティへのサポートを積極的に行っていることを、留学生の一人として非常に誇りに思います。
JICUF:留学して良かったと思うことは何ですか?
MH:本当にたくさんあるのですが、色々な視点から物事を見られるようになったことでしょうか。その結果として、自分という存在やアイデンティティを考えると共に、コミュニケーションの取り方に気をつけるようになりました。日本にいる時は、会話を進める時に先入観(Assumption)で話していることがほとんどでありながら、それに気づいていないことが多かったのです。ですが、留学してから日本では会うことが難しいような人たちと出会ったり、自分が「日本出身の」「ネイティブスピーカーでない」というある意味マイノリティ になったことで、その先入観 がいかに危険なものであり、周縁化されたグループ(Marginalized Group)を生み出す可能性があるということをより強く感じるようになりました。ですから、英語の時も日本語の時も言葉を考えて選ぶようになりましたし、会話により慎重になりました。本来コミュニケーションはそうあるべきなのではないかと思います。日本にいてはなかなか学べないことを学べました。
アメリカという国により興味が湧いたことも、この留学で得たことの一つです。私にとってアメリカとは、一言ではなかなか表せないような非常に興味深い国です。アメリカは特に人種のるつぼと言われる国ですし(「人種のるつぼ」という表現にも問題は色々あるということをこちらに来て初めて知りました)、もちろん人種だけではなく、エスニシティ・宗教・文化をはじめとした色々なものが一つの場所に存在している環境を直に感じることができました。アメリカという国が国として機能していることが不思議なほど、こんなにも「多様な」という言葉が合う環境はないと思います。 それに伴って、日本という国も一言では表せない多様な国であるとわかりました。こちらで出会った人たちの抱いている「日本」や「日本人」に対する印象に驚かされることもありましたし、逆に今まで私が日本に対して持っていたステレオタイプや先入観も洗い出されました。その意味では、母国である日本そのものへの見方も大きく変わったと言えると思います。これらは留学を通して得た大きな発見でありましたし、私のこれからの生き方に影響してくるのだと思います。
JICUF:どんな授業を取っていますか?クラブ活動には参加していますか?
MH:先学期はGSSの授業を中心に3つの授業を取っていました。その中でも印象に残っているのが『哲学とセクシュアリティ』という授業です。様々な性に関する事象を哲学的にアプローチしていく授業なのですが、基本的にディスカッションベースで授業が行われます。性教育やセックスワーカー、BDSM、フェティシズムなどのトピックについて哲学的にアプローチしました。ICUでは議論してこなかった内容を学ぶことができて貴重な体験でした。
これらの座学の授業に加え、1単位で音楽メジャーのジャズアンサンブルの授業も取っていました。そこで久しぶりにトロンボーンを吹きました!アンサンブルということもあり参加者の人数は少なかったのですが、学生だけではなくギルフォード の卒業生や職員の方も参加していたので、和気あいあいとした雰囲気で楽しかったです。中間と期末の時期にコンサートを開くのですが、友達だけではなく、先述した哲学の授業を担当していた教授が見に来てくださいました。とっても嬉しかったですし、この密なコミュニティがギルフォード のいいところだなと思いました。
今学期は、宗教学・社会学・ジェンダーセクシュアリティの三つの分野に跨って履修を組んでいます。まだ新学期が始まったばかりなのですが、どの授業も個性的で面白いものばかりです。とってもワクワクしています!
クラブ活動に関してですが、二つのソサイエティ に所属しています。一つがギルフォード・カレッジ・プライド(Guilford College Pride)というLGBTQ+コミュニティです。週に1度集まって、ジェンダーやセクシュアリティに関するディスカッションをしています。また、多文化教育科と連携して、学内の性的多様性を促進するためのワークショップなどを定期的に開催しています。
もう一つ所属しているのがインターナショナル・クラブ です。各国からやって来る留学生や海外出身の正規生だけではなく、アメリカ出身の学生も集い、様々な国の文化について学んでいます。学期ごとにいくつかイベントを企画しており、今は今学期に開催が予定されているインターナショナル・フェスティバル に向けて準備を進めているところです。
JICUF:将来の夢はありますか?ご卒業後の進路について教えてください。
MH:自分の専攻であるGSSで学んだことを活かせる活動をすることです。アメリカに来てからより強く感じるようになったのですが、日本はやはりジェンダー・セクシュアリティのダイバーシティの促進が絶対的に足りていません。最近になって企業や教育機関でLGBTフレンドリーを宣伝しているところも見受けられるようになりましたが、その内容も非常に不十分です。それは日本の性教育の内容を見ても確かなことですし、日本でも性の多様性の理解が促進されているとは言い難い状況です。日本で見受けられるそのようなギャップを埋めるような草の根的な活動をしたいと思っています。そのためにはより多くの知識や研究が必要となるはずですので、卒業後は大学院に進学することを考え始めました。できれば海外の院に進学したいと思っています。卒論の内容を掘り下げて大学院で研究したいです。
JICUF:ありがとうございました!残りの留学生活を満喫してください。