JICUF Study Abroad奨学金受賞者・若林彩音さんのUK留学体験記
2023年度にJICUFのStudy Abroad奨学金を受賞した若林彩音さんが英国への留学を終えて帰国し、その体験を共有してくれました。
“My Wonderful Journey in the UK”
美しいUEAのキャンパス。ちょっとICUのキャンパスに似ています。
はじめに
私は2023-2024年度交換留学プログラムに参加し、イギリス・ノリッジに位置するイーストアングリア大学(UEA)で、約9ヶ月間勉強しました。ICU入学前に金銭的な理由から「留学はしない」という約束を両親と交わしたので、まさか自分が留学をするなんて微塵も思っていませんでしたし、留学の必要はないとも思っていました。
しかし、「もっと社会言語学を勉強するために留学がしたい」と心から思うようになり、両親を説得しました。社会言語学という学問は、私にとってそれほど魅力的だったのです。この交換留学に参加するまで、つまり生まれてから21年間、私は1度も飛行機に乗ったことがなく、本州を出たことすらなかったので、間違いなく英国留学は私の人生における最大のチャレンジでした。交換留学の校内選考に合格するために卒業を延期することを決め、英語力の向上にいそしみ、留学に必要な費用を少しでもまかなうために休学して、ほぼ毎日働きました。私のイギリスでの大冒険を、皆様と一緒にこのような形で共有できることを心から嬉しく思います。
たくさんの思い出があるデスク。去る前に、来年この部屋に住む人が楽しい日々を送ることを祈りました。
学びの旅路
「人々が社会でどのように言語を使用しているのか」を知るために、UEAでは主に社会言語学を勉強しました。履修した授業の中でも、特にイギリス手話の授業が印象に残っています。「外国語で手話を学ぶ」というのは簡単なことではありませんでしたが、とても貴重な機会でした。それまで私は「言語」について考えるとき、いつも音声言語のことしか考えていなかったので、手話を学ぶことで、自分の中の「言語」という概念が広がったのです。イギリス手話を担当していた先生が授業中におっしゃた言葉で、印象に残っているものが2つあります。
「ろう者にとって、第一言語(心の言語)はイギリス手話であって、英語は第二言語であることを、くれぐれも忘れないで。」
「言語を学ぶ(語彙や文法を学ぶ)だけでは、心を通わせるのに不十分な場合がある。だから私たちは文化や、何が受け入れられて何が受け入れられないのか(=つまりマナーやエチケット)も学ぶ必要がある。
イギリス手話の語彙・文法だけではなく、歴史、そしてろう者の文化を学ぶことで、「言語」の概念を広げるとともに、「人々がどのように言語を使用しているか」をそれまでとは違った視点から考えることができました。
海外で勉強するにあたり、最も苦労したこと。それは、英語力と知能を結びつけてしまったことです。英語を流暢に話せる人は、知能が高いと思い込み、自分以外の人が賢く見え、自分だけが置いて行かれているような気持ちになりました。言いたいことが言えないとき、大きなフラストレーションを感じました。フラストレーションを感じる度に、ノートを広げペンを持ち、自分の気持ちと向き合い、なぜモヤモヤしたのか、これから何ができるのかを書き出しました。この9ヶ月間で英語が飛躍的に伸びたとは言えませんが、それでもフラストレーションを乗り越え、限られた語彙でどのように自分を最大限に表現するかということを学びました。
キリスト教の旅路
イギリス滞在中に経験したもうひとつの大きな変化は、キリスト教に触れたことです。滞在中にバイブルスタディーや、地域の教会に行こうと思ってはいたものの、なかなか勇気が出ないまま、5ヶ月が過ぎました。しかし、そんな状況を変えるターニングポイントが訪れまし た。最初のきっかけはオランダ・アムステルダムでした。ひとりでアムステルダムにある、ヴァン・ゴッホ美術館に行ったときのことです。美術館にはゴッホによるたくさんの作品が展示されていましたが、なかでも”Still Life with Bible”という題名の作品が目にとまりました。
「聖書は何か大切なメッセージを伝えようとしているのではないか」と思い、私はできるだけすぐに聖書を読もうと思いました。アムステルダムから帰国した翌週、私は初めてバイブルスタディーに参加しました。さらに、3月にはChristian Unionが主催するイベントにも参加し、日曜礼拝、アルファと呼ばれるキリスト教について学ぶコース、ライフグループにも参加しました。そして、英語版の聖書も手に入れました。何よりも幸せだったのは、素敵なChurch Familyに出会えたことです。彼らが聖書の表紙に書き残してくれたメッセージは大切な宝物です。信仰は自分には関係ないと思っていましたが、そんなことはなく、私はこの9カ月間、神様に見守られ、正しい道へと導かれていたのだと思います。帰国後も、聖書を読み続けています。
フラットメイト達と。一人一人の誕生日パーティーを開きました。(左の写真中央、右の写真前列左が若林さん)
最後に
インターネットが発達した今の時代、未知なものを既知なものへと変換することは簡単です。インターネットで検索すれば、ものの数秒で私たちは知らないことを知ることができ、知らない場所に直接足を運ばずとも、その場所について知ることができます。しかし私はあえて、知らない場所に足を運ぶことを決断しました。旅に出る・冒険に出るということは、自分の身に降りかかる予想のつかない変化を受け入れることです。私は21年間のコンフォートゾーンを飛び出したことではじめて、全てを無理にコントロールしなくても、心配しすぎなくても、意外と上手くいくということに気づきました。そして様々な縁や奇跡に遭遇します。また、私はイギリスという、いるべき場所に置かれたのだと思います。私の交換留学は出会った全ての人に造り上げてもらいました。ご縁があってUEAという留学先に派遣されたことに、心から感謝しています。交換留学プログラム自体は終了しましたが、留学を通じて学んだことを多くの人たちに伝えていく、という点で、私の交換留学はこれからもずっと継続するのだと思います。
最後に、JICUF STUDY ABROAD奨学金を通して、私の交換留学を支えてくださった全ての方々に心から感謝申し上げます。この奨学金がなければ、交換留学を辞退していたかもしれません。今後は、交換留学に参加したいけれど躊躇している学生をサポート出来ればと思っています。いつか皆様に直接会って、私の体験談を共有できるのを楽しみにしています!
Norwichのお気に入りの場所「The Plantation Garden」