JICUF理事インタビュー:スーザン・シュミットさん
2018年にJICUF理事に任命されたスーザン・シュミットさんは、1972年から1996年まで東京に住み、東京大学出版会で英語書籍の編集者として勤務しました。現在はコロラド州ボルダー在住で、アメリカ日本語教育者協会(AATJ)のエグゼクティブ・ディレクターを務めています。
JICUF: 長年東京でお仕事をされましたが、その経緯を教えてください。
スーザンさん: 日本を訪れたのは単なる好奇心からで、数年滞在できればと思っていました。しかし私には編集の経験があり、東京滞在中に、英文書籍やジャーナルを担当する人材を探している出版社が複数あることを知りました。結局私は学術出版社で 20年以上働き、日本人研究者が執筆した学術書や、日本語文学作品の翻訳書の編集・出版を担当しました。
JICUF: 日本での思い出、驚いたこと、楽しかったこと、苦労したことなどを教えてください。
スーザンさん: 私にとって日本での一番の思い出は、1970年代から90年代にかけて、日本語と英語で仕事をしていた翻訳者、作家、編集者の素晴らしいコミュニティに出会い、彼らと親しくなったことです。アメリカに戻って何年も経った今でも、彼らの多くと連絡を取り合っています。
東京は刺激的で魅力的な場所で、活気に満ちた中心部、静かな住宅街、美味しい食べ物、温かい人々、そして豊かな文化的生活に魅了され、愛するようになりました。私はシングルマザーとして東京での生活の大部分を過ごし、2人の娘を育てました。娘たちの学校の習慣や行事に適応するのに苦労しましたが、日本の教育制度とその価値観から多くを学び、大きな影響を受けました。
また、東京時代に本格的なジャズファンになりました。大規模なコンサートから小さなクラブまで、東京でのライブな音楽シーンは楽しい発見であり、新しい世界を開いてくれました。好きなジャズミュージシャンには、坂本龍一(彼の音楽はジャズのカテゴリーを超えていましたが…)、70年代と80年代の山下達郎、日野皓正、そして秋吉敏子がいました。いくつかのコンサートや大きなクラブにも行きましたが、ほとんどは近所の小さなジャズクラブか、友達が勧めてくれたり、ミュージシャンがこじんまり演奏する場所に行っていました。
写真左:馴染みの寿司屋で友人と / 写真右:女性向け求人雑誌「とらばーゆ」インタビュー誌面
JICUF: 次回日本へ行く機会があったら、どこへ行きたいですか?
スーザンさん: 日本に長期滞在する機会があったら、住んでいたときは一度も行ったことがなかった沖縄と、山形に行ってみたいです。山形県はコロラド州の姉妹県で、山形市は私が住んでいるボルダーと姉妹都市でもあります。
JICUF: JICUF理事になった経緯を教えてください。
スーザンさん: ICUの卒業生でありJICUF理事を務めていたセント・オラフ大学のフィリス・ラーソン教授にJICUF理事にならないかと尋ねられたのがきっかけです。私は ICU に通ったことはありませんが、ICU が国際的な視野を持ったリベラルアーツ大学であることを知っていましたし、ICUは私が日本語を勉強する際に使った教科書を書かれた先生方の出身校でもありました。
東京大学出版や他の出版社で働く親しい同僚の中にも、ICUの卒業生が何人かいました。そのほとんどは1960年代・70年代にICUで教育、執筆、出版などの分野でキャリアを築くことを奨励された女性たちでした。私は長年東京西部に住んでいましたが、子供たちとよく車や自転車で吉祥寺や三鷹に行き、野川公園や 美しいICU キャンパスを散策したので、ICU近辺には親しみがありました。ICUに深い敬意を抱いていたので、できることならICUの活動を広め、貢献したいと思いました。
2023年秋、JICUF理事・スタッフと共に(写真左端)
JICUF: スーザンさんのJICUFにおける任務は?
スーザンさん: JICUF のプログラムの 1 つに、学生・教員・卒業生による研究や地域社会での活動に資金提供する助成金プログラムがあります。私は助成金委員会のメンバーとして、助成金の申請書を審査しています。助成金の対象となる研究やアドボカシー、コミュニティ構築に関するプロジェクトの企画書を読んだり、助成金によってプロジェクトを実現できた学生や教員と会って話をして、おおいに刺激を受けています。
JICUF: JICUFの理事になってよかったと思うことはありますか?
スーザンさん: 様々な背景をもち、ICUを愛する素晴らしい理事仲間やスタッフとともに仕事ができることを楽しんでいます。世界各地の戦禍を逃れた難民の学生に、日本有数の大学で教育を受けるためのプログラムでリーダーシップを発揮するなど、財団の重要なプログラムに尽力することに意義を感じています。
JICUF: 現在お住まいのコロラド州ボルダー市は、街全体で自然や環境保護への意識が高く、住民は自然と共生して暮らしていると聞きました。ボルダーでの生活と現在のお仕事について教えてください。
スーザンさん: ボルダーは美しい自然に囲まれています。数年前、市は周辺に「オープンスペース」と呼ばれる広範なネットワークを作り、そこでの工業開発を禁止しました。多くの住民がハイキング、サイクリング、スキーなどを楽しんでいます。大規模な大学があり、ハイテク企業も多数進出しているため、文化的・知的な活動がとても盛んです。
AATJ(米国日本語教師協会)の本部はボルダーのコロラド大学にあります。私の仕事は、ジャーナルの発行、あらゆるレベルで日本語指導を行う教師向けの職能開発プログラムの運営、米国におけるJLTP(日本語能力試験)の実施、日本留学のための奨学金プログラムの運営などです。
スーザンさん、ありがとうございました!
コロラド州ボルダー郊外の風景